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質問:2歳の娘の斑点が心配

 2歳の娘のことでお尋ねします。赤ちゃんのおしりにできる蒙古斑(もうこはん)が、背中全体と太ももの一部に地図のように広がっています。成長するにつれて薄くなると思っていたのですが、全くその気配がありません。早めに治療した方がいいのでしょうか。



【答え】 蒙古斑 -95%は自然に消滅-

小松島赤十字病院 形成外科部長 長江 浩朗

 蒙古斑は乳幼児のおしりから腰、背中にかけてよく見られる、灰色がかった青色をした比較的大きな斑点です。名前からも分かるように日本人、中国人など蒙古系の民族に特有と考えられていた時期もありましたが、黒人にも多く見られ、白人でも生まれたばかりの赤ちゃんの約1割にあることが分かっています。また、今挙げた場所以外にできることもあり、異所性蒙古斑と呼ばれます。

 なぜ色が着いているのかというと、蒙古斑のある場所には、真皮(しんぴ)メラノサイトという、メラニンを作る細胞が皮膚の深いところにあるからです。

 メラノサイトは普通、表皮と呼ばれる皮膚の浅いところにあり、紫外線が当たるとメラニンを作り、皮膚を紫外線の障害から守る働きがあります。

 その結果、黒く日焼けすることになります。真皮にあるメラノサイトがどんな働きをするのかは分かっていません。

 また、青く見えるのはメラニンが深いところにあるためといわれています。

 蒙古斑は自然に消えていくといわれていますが、何歳くらいまでになくなるのでしょうか? これまでの報告によると、3歳くらいまでは9割前後に見られますが、4歳ごろから色が薄くなり、だんだん消えていくとされています。10歳では5%となりますが、成人に達しても4%は残っているという報告もあります。

 消えていく理由としては、真皮メラノサイトが壊れていくため、成長とともに皮膚は厚くなり面積も増えますが、真皮メラノサイトは増えないので、分布密度がかなり低くなるため、真皮メラノサイトがメラニンを作らなくなるため-などの説がありますが、はっきりとは分かっていません。

 ほとんどが自然に消えていくため、一般的には治療の必要はありません。ただ、先ほど申し上げたように、成人になっても消えない場合があります。その時はレーザー治療などが行われます。最近、乳幼児期にレーザー治療したほうが良い効果が得られるという報告もありますが、95%もの割合で自然に消えるものを治療しているわけですから、早期の治療が良いかどうかの結論を出すのは早いような気がします。

 さて、ご相談の子供さんですが、現在2歳であればまだ色が薄くなる時期ではありません。あまり色が濃くないのであれば、何もすることはありません。このまま様子を見てください。かなり色が濃いようでしたら、早く薄くする目的でレーザー治療するのも一方法です。しかし、成人になっても残っている蒙古斑はほとんど直径7cm以下といわれており、何もせずに経過を見ても今のまま全部残ることは考えにくいと思います。

 念のために一度、形成外科か皮膚科を受診し、専門家にみてもらって意見を聞くことをお勧めします。

徳島新聞2000年12月17日号より転載

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