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県民の皆さまへ

【質問】 自分の物触られるとパニック

 3歳3カ月になる娘が、春ごろから物に強い執着を示すようになりました。その物を別の場所に置いたり、触ったりすると激しく泣き叫び、パニック状態になって手のつけようがありません。執着は、おもちゃや単なる箱でも、主人と寝ているベッドの周りに運び、少しでも動かしたり、子供部屋に戻すとパニックになる、布団をぐちゃぐちゃの状態にしていないと、「なんで片付けたん」と泣き叫ぶ、毎朝、主人の出勤時に「いかんといて」と泣き叫び、主人のかばんやズボンを隠したり投げたりする・・・などです。しかし、こんな状態は朝だけで、日中は別人のように普通の娘です。集団でやっていけるかどうか心配で、来年から幼稚園に通わせたらよいかどうかで悩んでいます。治まる日がくるのでしょうか、どのように接していけばいいのでしょうか。



【答え】 子供の執着 -友達と遊び我慢学ぶ-

小松島赤十字病院 第二小児科部長 中津 忠則

 子育て上の心配事や悩みは、どの親も経験することであり、われわれ小児科医も相談を受ける機会が多くなっています。ただ紙面でのお答えには限界がありますので、一つの意見として受け取っていただければ幸いです。

 子供は普通に発達すれば、2~3歳になると自我に目覚め、自己主張をするようになります。お子さんのように自分の物の置く場所や布団のぐちゃぐちゃ状態に執着することも、その一つとしてとらえられます。また、この年齢になると、多くの子供がおもちゃ、縫いぐるみ、布団やタオルなどに執着(愛着)を示します。

 また執着を示す物を別の場所に置くか片付けると、泣き叫び、時にはパニック状態になることも、この年齢では普通にあってよいことと思われます。一般的には自我が芽生えてきたときには、禁止や命令の言葉よりも、その変化を認める言葉掛けが大切だと思います。

 従って、その物を別の場所に戻したり片付けたりするよりも、「ここに置いておきたいよ」「ぐちゃぐちゃの布団が好きだよ」という子供の気持ちをそのまま受け止めてあげてはどうでしょうか。

 父親の出勤時に「いかんといて」と泣き叫ぶ態度は、恐らく「大好きなお父さんに一緒にいてほしい」と思う気持ちの表れで、一つの自己主張であると思われます。自己主張が済めば、その後は別人のように普通の子供さんの状態でいられるわけです。また、お子さんと父親の愛着がしっかりとできている証拠であるとも思われます。もちろん母親との愛着も大切ですが、日中の落ち着いた様子から、それも良好に築かれていることと推察されます。

 出勤時の具体的な対応としては、無理やり引き離さずに「寂しいけど我慢しようね」「帰ってきたら遊んでもらおうね」というような声を掛けて我慢させてはどうでしょうか。

 また集団でやっていけるかどうかを心配していらっしゃいますが、家庭で親に強い執着を示すからといって、集団でやっていけないことはまずないと思われます。3歳ぐらいになると集団欲に目覚め、友達を欲しがるようになります。幼稚園などで友達とかかわり、遊ばせるのがよいと思います。子供は遊びの中で自己主張や我慢することができるようになり、相手の気持ちや立場を理解するようにもなります。

 なお、継続して相談を希望される場合は、県医師会、県児童相談所などに連絡されることをお勧めします。

徳島新聞2000年11月26日号より転載

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