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【質問】 投薬減らすと症状が悪化

 1歳6カ月の孫のことで相談します。5月中旬に「特発性血小板減少性紫斑(はん)病」で入院し、10日間ステロイド剤を投与して退院しました。しかし、薬をやめるとすぐに血小板が減って再入院。現在は通院しています。ステロイドの量を3分の2にすると減り、再びもとの量に増やすという繰り返しです。この薬を続けていると成長に影響すると聞き、副作用を心配しています。ほかに治療法はないのでしょうか。この病気について詳しく教えてください。



【答え】 特発性血小板減少性紫班病 -経過見ながら治療継続を-

小松島赤十字病院 第一小児科部長 吉田 哲也

 正常な場合、血液1立方ミリメートル中、約20万個の血小板があり、出血を止めるために働いています。この血小板が減って5万個以下になると、軽い打撲でも皮下出血斑(紫斑)が生じます。さらに2万個以下になると、けがや打撲もないのに皮下出血や鼻血が自然に発生し、非常に危険な状態になります。

 血小板は、赤血球や白血球と同じく、骨の中の骨髄で作られ、寿命は7~9日ほどです。古くなると、脾(ひ)臓やリンパ節で壊され、処理されます。

 脾臓の病気、骨髄の病気、感染症(風しん、はしかなど)や薬の影響などにより、血小板が減ることがありますが、これは症候性血小板減少性紫斑病といいます。一方、あなたのお孫さんのような特発性血小板減少性紫斑病とは、明らかな原因が認められない血小板減少症をいいます。

 この病気は、年長児や成人でも認められますが、小児期では1~6歳に多く発症します。発症後半年以内に血小板数が正常に戻ったものを急性型、半年以上減少が続くものを慢性型と呼んでいます。小児では70~80%が急性型で、数カ月の経過で改善することが多いようです。

 年長児や成人に慢性型が多い傾向はありますが、どちらの型かは発症から半年たった時点で分類されることになります。

 症状は皮下出血(紫斑)が主ですが、血小板が減少する程度が強くなるにつれ、出血も広範囲となり、まれに内臓や頭がい内(約1%)出血の危険性もあります。発症当初は特に十分な配慮が必要となります。

 初期の治療は、お孫さんに行われているステロイド剤の投与が最も一般的です。重症例ではγ-グロブリン製剤の投与が行われることもあります。いずれの方法でも血小板が正常化しない場合があり、お孫さんのように血小板が増えても薬を中止、減量することで再び血小板が減ることもあります。

 このような場合、成人では他の薬(免疫抑制剤など)も使いますが、小児では副作用もあり、お勧めできません。血小板数と出血症状を見ながらステロイド剤をできるだけ減らし、血小板が回復するのを待つのが最も良い方法かと思われます。

 半年過ぎても減少が続く場合は慢性型ということになります。ただ、小児では数年から7年くらいで自然に回復することが多く、出血症状が見られない場合は、注意しながら改善するのを待つことになります。慢性型で出血症状がコントロールできない重症例では、脾臓を手術で摘出することで70~80%の効果が得られます。しかし、年少児は脾臓を摘出してしまうと、重症の感染症が起こりやすくなるため、乳幼児期にはお勧めできません。

 この病気は小児では数カ月から半年で改善することが多いのですが、原因がはっきりせず、予防法もなく、治療も絶対的な方法はまだありません。一部の人は慢性化して長期間悩みを抱えることになります。このため現在、厚生省では、この病気を特定疾患に指定し、医療補助や研究の推進を図っています。

徳島新聞2000年9月3日号より転載

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