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【質問】 わきや胸、首筋に湿しん

 30歳の女性です。20歳のころから、わきの下や胸、首筋、目の下に湿しんができています。診察してもらうと「汗管腫(しゅ)」といい、薬は特にないとのことでした。湿しんが出ないようにする薬は本当にないのですか。また、どのような原因で出るのか教えてください。原因を断てば、治るのではないでしょうか。



【答え】 汗管腫 -抑制薬ないが良性腫瘍-

戸田皮膚科医院 院長 戸田 則之(徳島市八万町内浜)

 皮膚は人体を覆い、機械的、化学的刺激や紫外線から体を保護しています。また、発汗することで体温を一定に保つ調節も行い、生命の維持に欠かせない機能を営む重要な”臓器“だといえます。しかし、皮膚にもさまざまな原因で先天的あるいは後天的に病変ができてきます。

 ご質問の汗管腫は、後天的な皮膚の変化の一つです。

 発生部位を理解していただくために、皮膚の構造についてお話しします。

 皮膚は〈図〉のように表面から表皮、真皮、皮下組織と大きく3つに分けられ、さらに毛包、脂腺(せん)、汗腺などが備わっています。ひとくちに皮膚の変化といっても、今述べたさまざまな部位から発生してきます。

 汗管腫は図のエクリン汗腺が、真皮内で増加して腫瘍(よう)状に見える病変です。子供や男性にも見られますが、主に思春期、あるいは中年以降の女性に見られる皮膚の良性腫瘍の一つです。よく発生する部位は顔面(特にまぶた)、前胸部、わきです。まれに孤立して現れることもありますが、普通は左右対称に多発します。

 大きさは直径1~2センチで、皮膚の表面からやや隆起し、ほぼ正常な皮膚の色か、淡い褐色をしています。残念ながらこの増殖を抑える薬はありません。また、遺伝的傾向も指摘されており、十分な予防法も確立されていないのが現状です。

 治療は、孤立例であれば手術による切除、縫合が可能です。多発例には液体窒素を用いた冷凍凝固術、電気凝固術、皮膚剥削(はっさく)術が従来行われてきました。しかし、確実性に乏しく満足のいく結果が得られないことが多かったようです。このため、これらの方法に代わり現在では、炭酸ガスレーザー術が試みられています。

 この治療目的は、レーザーを用いて腫瘍を取り除くのではなく、でこぼこした皮膚を平坦化し、正常な皮膚と同じ高さにすることです。具体的には、真皮上層のオタマジャクシ状と形容されている腫瘍の塊と、その周囲を取り囲む線維を破壊し、均一にします。

 実際の治療法は、まず3~4個の汗管腫についてテスト照射します。照射後、1~2カ月の時点で、皮膚の赤味や、でこぼこの改善度を確かめた後、本格的に治療を進めていきます。レーザー治療も100%満足できる方法ではありませんし、病院により治療成績も異なります。詳しくは皮膚科あるいは形成外科の専門医にご相談ください。

徳島新聞2000年8月13日号より転載

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