徳島県医師会 トップページへ

  • 文字サイズ標準
  • 文字サイズ拡大
文字サイズ変更について
県民の皆さまへ

【質問】 病院で測ると血圧が上昇

 50歳の女性事務員です。会社の検診で内科を受診したところ血圧が180もあり、測り直すと190まで上がりました。家庭用血圧計で時々測定しますが、普段の血圧は130前後です。血圧計が狂っているのかと思い、内科に持参して測り比べたところ、どちらも180前後で医師の診断は「白衣高血圧症」でした。なぜ病院へ行けば血圧が上がるのか不思議でなりません。白衣高血圧症の人は将来、高血圧症になりやすいそうですが、予防に軽い降圧剤を飲む必要があるのでしょうか。また、どのくらいまで上がれば治療を受けるべきなのか迷っています。母は降圧剤を飲み始めると一生飲まなければならないと言いますが、正常値になっても飲み続ける必要があるのでしょうか。



【答え】 白衣高血圧症 -まず生活習慣を改善-

斎藤内科循環器科 院長 斎藤 雅彦(徳島市城南町1丁目)

 白衣高血圧症とは、診察室では何回測定しても高血圧を示すのですが、家庭など診察室以外の場所で測ると、常に正常血圧となる場合をいいます。一つの病気として注目されるようになったのは最近のことですので、診断基準はまちまちです。

 今のところ、診察室で測った血圧が140(最高血圧)/90(最低血圧)以上で、家庭での血圧が135/85未満を示すものを白衣高血圧症とみなします。

 あなたの場合、家庭での最低血圧の記載がありませんが、その数値が右記に示した値未満であり、いつ測っても診察室と家庭で常にこのような差を示すのであれば、診断どおり白衣高血圧症だと思います。

 以下、ご質問に順次お答えしていきます。

 この症状の原因は、医療環境下での心理的な要因や、一種のストレス反応とその他の複合的要因が絡み合ったものと考えられています。

 家庭血圧がどれくらいなら正常なのか、という明確な診断基準は今のところ決まっていません。ただ白衣高血圧症から高血圧症に移行する率は、家庭血圧の正常基準を低く設定すると2割、高くすると8割に上ることが報告されています。従って家庭血圧が低い場合には移行は少ないのですが、高血圧症への移行例がある以上、今のあなたは高血圧症に移行する前ぶれの状態にあると考えるのが賢明です。

 高血圧症への移行を防いだり、治療したりする上で最も大切なことは、生活習慣の改善〈表参照〉に努めることです。それでも血圧が上がる傾向がみられたり、高血圧症以外の心臓血管系疾患の危険因子(脂質代謝異常、糖尿病など)や、高血圧症による臓器障害(左室肥大、タンパク尿など)がある場合は、薬物療法を考える必要があります。

 これら危険因子、臓器障害がない場合で、家庭血圧が130/80以下なら、薬物療法の必要はありません。130~135/80~85なら、一層の生活習慣の改善に努めてください。それでも135/85を超えてしまった場合は、薬物療法を考えます。

 降圧剤を服用して目標の血圧に達している場合は、その値を維持するために服用を続けていただくことも少なくありません。しかし、軽い高血圧症の患者さんの約半数は進行せず、中には自然に低下する例があります。この場合、薬を減らすことができますが、減量後は定期的な経過観察が必要です。

徳島新聞2000年7月16日号より転載

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.