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【質問】 夜中に何度もトイレに起きる

 68歳の男性です。6年ほど前に、前立腺(せん)肥大症の内視鏡手術を受け、半月余り入院した後、通院しました。しかし、トイレに行く回数は手術前と変わりません。薬も病院の薬、漢方薬といろいろ飲み、昨年、レーザー光線の手術もしたのですが、いっこうに良くなりません。昼にビールを飲んだら、夜中まで影響します。夜間にトイレに起きる回数が多く、睡眠不足になります。何とか、治療法はないものでしょうか。



【答え】 高齢男性の頻尿 -前立腺肥大症以外の原因も-

亀井病院 泌尿器科医長 浜尾 巧(徳島市八万町中津浦)

 頻尿とは、排尿回数の増加、あるいは排尿間隔が減少した状態を言います。正常者では、排尿間隔はだいたい4~5時間、1日の排尿回数は5~6回が普通で、夜間睡眠中は排尿がないか、あっても1回ぐらいです。一般的に排尿回数が1日9~10回以上の場合を頻尿、就寝以降の排尿が2~3回以上の場合を夜間頻尿と診断します。

 ご質問にあるように、頻尿は日常生活をする上でやっかいな症状の一つです。特に高齢者では、旅行の時にトイレに行きたくなったらどうしよう、とつい遠出を控えてしまったり、夜間頻尿となると、不眠のため体調を崩したりします。

 さらに、体の動きが悪い場合には、トイレに間に合わずに下着をぬらしてしまうようになり、生活の質を低下させる原因ともなります。

 高齢男性の頻尿の原因としては、<1>加齢に伴う下部尿路の変化<2>前立腺肥大症<3>内科的病気-などを考慮する必要があります。

 前立腺肥大症では、増加した尿道抵抗に打ち勝って尿を排出する必要があるため、ぼうこう排尿筋は過敏な状態になり、頻尿、尿意切迫、尿失禁などのぼうこう刺激症状が比較的多く現れます。

 この状態は、前立腺手術後に約7割が改善しますが、前立腺肥大症の手術を受けても、頻尿の改善がみられないことから、前立腺肥大症以外にも頻尿の原因が存在しているといえます。

 65歳以上の高齢者の4分の3は、何らかの全身的な慢性の病気を有するといわれています。脳血管障害などに起因する潜在性の神経因性ぼうこう機能障害の頻度は高く、糖尿病や心不全、腎(じん)機能障害による尿濃縮力の低下が、夜間の多尿・頻尿の原因となることもまれではありません。

 夜間の多尿には、加齢に伴う夜間安静時での腎循環血流量の増加や抗利尿ホルモンの減少が関係しています。また、心因性の頻尿も時に認めます。その他、過剰な水分摂取習慣、不規則な睡眠パターン、睡眠障害も頻尿の原因となります。

 頻尿に対する治療方針を立てる上で、1日の排尿記録をとり、排尿時刻と排尿量を調べることは重要です。できれば2~3日連続で記録すると、1日の尿量が異常に多くなっているとか、尿量の増加が夜間に多いとか、1回の排尿量が少なくなっているとか、排尿パターンの日内リズムがよく分かります。また、ぼうこう内圧測定などのぼうこう機能検査も必要です。

 治療は、原因となった病気の治療が優先しますが、1回の排尿量が少なくなっている場合には、「抗コリン作動薬」などのぼうこうをリラックスさせる薬を用います。潜在的に心臓や腎臓の病気があり、夜間多尿による頻尿をきたしている場合には、昼寝を十分にとり、1日の尿量を昼間に配分させる工夫も必要です。

 高齢男性の頻尿は、複雑な要因を併せ持っており、その病態の把握は困難なことが少なくありません。泌尿器科的な病気以外の原因もよく調べて、原因に対する適切な治療法を選択するのがよいでしょう。

徳島新聞1999年12月5日号より転載

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