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【質問】 夜間のせきに悩む

 74歳の男性です。10年前から鼻炎で悩んでいます。就寝後、2時間ほど経過すると、粘りのある鼻汁がにじみ出してきます。色もにおいもありません。鼻汁はのどに落ち、それが気管に入り、呼吸困難となり、目覚めます。その鼻汁を取り除くためのせきが出て、苦しんでいます。医院の薬、漢方薬、点鼻薬などを使用しましたが、効果がありません。昼間は症状もなく、鼻汁も出ませんが、昼寝などで横になると1時間ほどで出てきます。なお、レントゲン検査の結果では、他の病気はないようです。治療法を教えてください。



【答え】 繊毛機能の衰え -鼻炎など鼻疾患治療を-

宇高耳鼻咽喉科医院 院長 宇高 二良(名西郡石井町石井)

 鼻には、空気を浄化するエアコンディショナーとしての働きがあります。人は肺で空気から酸素を取り込んでいますが、この空気は決してきれいなわけではありません。鼻は空気を加湿、加温し、ほこりを取り除いて、肺に送り込んでいるのです。


 鼻の中には数枚の粘膜のひだがあり、空気と接する表面積が大きくなるようになっています。この粘膜では、1日に約1000mlもの鼻汁が分泌され、粘膜表面を常に湿らせています。そのうち約700mlは粘膜表面から放散し、空気の加湿のために使われます。残りの約300mlは粘膜表面にあって、ほこりの吸着に役立っています。

 ほこりを吸着した鼻汁は、同じく粘膜表面にある繊毛細胞によって、ベルトコンベヤーのように少しずつ鼻から咽頭(いんとう=のど)へ送り出されます。下咽頭に達した鼻汁は、表面にある知覚神経によって認知され、無意識のうちに食道へ飲み込まれたり、せき払いのときに外に吐き出されたりします。

 アレルギー性鼻炎や副鼻くう炎(いわゆるちくのう)などにかかると、鼻汁の分泌される量が増加し、そのうえ繊毛機能が障害を受けます。そうなるとベルトコンベヤーがうまく働かなくなり、鼻汁は一度にまとまって、のどの方へ流れ込むことになります。

 人には、内臓の機能を調節する自律神経というものがあります。日中は活発に運動するための神経が働きますが、夜間の睡眠時には、体を休め、栄養を吸収したり、体を発育させる神経が活発に働きます。だから、寝ているときには、鼻汁の分泌も増加するのです。また、起きているときに比べて、睡眠中には飲み込み動作の回数が減少するので、鼻汁やだ液が下咽頭にたまり、人によっては、前方の気管へ流れ込み、せきが出やすくなります。

 年齢とともに、繊毛機能や下咽頭の知覚神経の働きは鈍くなってきます。したがって高齢の方では特に病気がなくても、このような現象が起こる可能性があります。

 ご質問の方は、従来、鼻炎があり、鼻汁が多く、繊毛機能が障害を受けていたところに、お年につれて症状がはっきり出てきたものと考えられます。

 対策としては、まず鼻炎などの鼻疾患を治療することです。鼻汁を減少させるために、点鼻薬を用いたり、繊毛機能を改善するためには、薬剤を服用するとよいでしょう。また、上半身を少し高くして寝ることも有効な方法です。

徳島新聞1999年10月10日号より転載

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