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【質問】 両ひざ痛く正座できない

 62歳の主婦です。4年前にパートを辞めてから、足を伸ばし、背もたれにもたれてテレビを見る時間が長くなりました。夫と2人の生活なので、動くことも少なく、そのせいか、両ひざが痛く、正座ができなくなりました。痛いので、ついつい足を伸ばして座っているうちに、今では全然正座ができません。立ったり、座ったりするとき、特に時間がかかります。就寝時に寝返りを打つと、目が覚めるほどの痛さです。起き上がるときは、しばらくひざを伸ばしたり、縮めたりして、慣らしています。ウオーキングをしても長く歩けません。年のせいといわれ、病院には行っていません。痛いのを我慢して、正座やウオーキングをした方がいいのか、それとも安静にしていた方がいいのか、教えてください。



【答え】 変形性ひざ関節症 -減食や有酸素運動有効-

村田整形外科医院 院長 村田 豊(徳島市鮎喰町2丁目)

 62歳という年齢や女性ということから「変形性ひざ関節症」と思われます。俗にいう「ひざの使いいため」です。

 関節とは、(図1)のように、2つ以上の骨が連結されて動いているところです。接している骨の端はツルツルの軟骨で覆われており、関節の中は潤滑油の役目をしている関節液で満たされているため、ほとんど摩擦がなく、滑らかに動くことができます。

 ひざ関節は、大腿骨(だいたいこつ=ふとももの骨)、脛骨(けいこつ=すねの骨)、膝蓋骨(しつがいこつ=お皿の骨)、そして腓骨(ひこつ)で構成されています。このうちの大腿骨、脛骨、膝蓋骨の軟骨が摩耗して滑らかな動きができなくなったり、骨の変形も加わり痛みを感じるようになったものが「変形性ひざ関節症」です。

 その原因としては、肥満や過激な労働、スポーツ、また下肢の骨格の異常、筋力低下、それに骨折、半月板やじん帯の損傷といった外傷が考えられます。

 質問の方も、長期間の家事や労働で、さらに肥満があるとすれば、余計に下肢に大きな負荷をかけていた可能性があります。そのうえ、最近の4年間はあまり動いていないようですので、下肢の筋力低下が進み、ひざの軟骨への負荷が増えて、症状が出たものと考えられます。

 また、関節を動かさないでいると、潤滑油の役割をする関節液の流れが悪くなり、軟骨の栄養障害が起こったり、関節周囲の筋肉やじん帯というスジが硬くなり、関節が動きにくくなります。

 治療としては、手術をしない方法(保存的治療)と手術的治療があります。保存的治療の初めとして、太っている人に対しては、減量です。

 減量の基本はダイエット(減食)と運動です。運動は、有酸素運動(エアロビクス)が有効です。ウオーキングは有酸素運動の代表的なものですが、下肢に体重の負荷をかけることにほかなりませんから、ひざに痛みのある人には勧められません。

 特に、坂や階段の昇降はダメです。また、腰や下肢に症状のない人でも、減量のためということで、いきなりウオーキングを始めるのは危険です。体重の負荷によって、腰や下肢に障害が発生する可能性があります。肥満→運動=ウオーキングという短絡的な図式は考え物です。

 正座も基本的にはひざによくありません。特に長時間の正座は、できる人でもしない方がよいでしょう。

 下肢に異常のある人に対しての有酸素運動としては、水中での運動がお勧めです。泳ぐのはもちろん、水の浮力を利用しての水中歩行が効果的です。ただ、わざわざプールに行かなければならないのが難点です。その点、室内での自転車こぎ(エアロバイク)は下肢への体重の負担が少なく、プールより手軽です。

 次に効果があるのが、温めることです。おふろでゆっくり温めながら、ひざを動かせると、あまり痛みがなく動くものです。保温用のサポーターもよいでしょう。また、(図2)のように、ふとももや下腿(ひざから足首まで)の筋肉を強くする体操も有効で、続けることにより、ひざの痛みを軽くすることができます。他に飲み薬、装具などによる治療があります。症状が進行すると、手術が必要となる場合もあります。

 一度、整形外科を受診して、レントゲンなどを受けることをお勧めします。きっとよい解決方法が見つかるでしょう。

徳島新聞1999年9月26日号より転載

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