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【質問】 顔の痛みが治らない

 34歳の看護婦です。今年2月から左側のこめかみや目の奥、ほほから小鼻にかけてが痛み出し、頭痛の痛み止めを飲んでも効きません。最初、脳外科では神経痛といわれ、特効薬を服用しましたが効果がなく、CTとMRI検査でも腫瘍(しゅよう)は見つかりませんでした。その後、神経内科でハリ治療と漢方薬治療を試みましたが、効果はありません。麻酔科では筋収縮性頭痛といわれ、神経ブロックをしましたが、これも効きません。肩こりの薬を飲んでみましたが、顔の痛みは治りません。歯科でも診察を受けましたが、悪いところはありません。だいたいは顔の筋肉を動かすと痛みますが、痛みの強い日は何もしなくても痛んで苦痛です。顔を触ると打ち付けたような痛みを感じます。安定剤も服用しましたが、気休めとしか思えません。何かいい治療はないでしょうか。



【答え】 三叉神経痛 -生活習慣を見直そう-

水の都脳神経外科病院 理事 佐々木 庸(徳島市北島田町1丁目)

 痛みをこらえ、ストレスの多い医療職に従事し、大変なことと察します。少し複雑な症状のようですので、病状の診断から見直し、特に三叉(さんさ)神経痛の症状を中心に説明しながら整理してみます。

 まず、三叉神経とは顔面の知覚をつかさどる神経で、この神経に何らかのトラブルが発生すると、この神経の領域、つまり顔面に痛みが起こります。これが三叉神経痛です。

 三叉神経痛の痛みは特徴的なもので、ポイントは▽誘発部位が存在する▽爆発的に起こりすぐ消える-という点です。典型的には歯を磨いたり、冷たい風が顔面もしくは口の中の決まった場所(誘発部位)に触ると、そこが三叉神経に過剰な情報を送って、爆発的に激烈に痛むわけです。

 この痛みは持続せず、数秒で消失しますが、誘発部位に刺激が加わると、何度でも痛みを起こしてしまいます。このため、ほとんどの患者さんが、どういう行為で起こるか経験的に理解できるので、誘発部位と誘発する行為(歯磨きなど)を説明してくれます。

 次に、その原因になる三叉神経のトラブルですが、簡単に言えば、神経が顔面に出てくるまでに、異物が神経に触って刺激していることが最大の原因です。具体的には、1)脳腫瘍や脳血管が神経に接触し圧迫している、2)神経の通り道に感染を起こして刺激している-の2点があります。

 質問の方の顔の痛みの原因を考えてみましょう。2)の感染が原因の場合は、三叉神経の近くにある眼球を動かす神経にも影響が出ることが多く、物が二重に見える症状を起こしますので、これは否定できます。

 1)に関しては、最近では、MRI検査でMRA(造影剤を使用しない脳血管撮影法)を行うと、非常に細い血管でも神経を圧迫していれば容易に診断ができるようになっています。このため、MRA検査を行い、本当に典型的な三叉神経痛であるかどうかを診断します。

 もし、徹小な脳血管が神経を圧迫している典型的三叉神経痛であれば、手術的に神経を圧迫している血管を移動させる「微小血管減圧術」を行うことになります。

 しかし、神経の近くに圧迫血管がない場合は症状的にも三叉神経痛は考え難く、次のステップとしては耳鼻咽喉(いんこう)科領域である副鼻腔炎の可能性も考えられます。

 以上の方法で診断がどれとも付かない場合は、いよいよ筋収縮性頭痛となるわけです。この痛みに関してはむしろ特効薬はなく、基本的には疲労やストレスが最大の原因といわれています。

 基本的なことになりますが、むやみに内服薬を増やすのではなくて、原因となっているストレス、疲労を蓄積しないよう生活習慣を見直し、その上で痛みの強い部分にレーザー治療を追加するなどの方法を継続することをお勧めします。

徳島新聞1999年8月8日号より転載

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