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【質問】 手足が重く 腰に痛み

 65歳の主婦です。5年ほど前、左手の手先の動きが悪くなり、1年後には左足が重く、動きにくくなりました。痛みもなく生活に不自由を感じませんでしたが、最近になって、腰が痛くなり、足を引きずって歩いています。脳の検査を受け、整体に通いましたが、良くならず、胸が苦しくなるときもあります。パーキンソン病の初期ではないかとの診断で、今使う薬はないとのことでした。このまま悪くなっていくのを待つだけの苦悩を思うと辛いです。本当にパーキンソン病であるのか、はっきりしませんが、心配です。パーキンソン病の初期の症状を教えてください。早期発見し、早く治療すれば、良くなるのでしょうか。



【答え】 パーキンソン病 -薬剤の服用で改善も-

近藤内科病院 院長 近藤 彰(徳島市西新浜町2丁目)

 パーキンソン病の診断を受け、体調がすぐれないご様子、さぞ心配で不安なことと推察します。お手紙を拝見しますと、発病の年齢や症状の経過から、パーキンソン病であろうと思います。早期発見・早期治療が病気の診療の大原則ですが、パーキンソン病も例外ではありません。パーキンソン病の初期ではないかとの診断ですから、この病気を十分に知っていただき、病気と前向きにつきあってください。

 パーキンソン病は、「振戦(しんせん=震え)」「固縮(こしゅく=歩行障害)」「無動(むどう=動作緩慢)」の3つの症状を表す進行性の神経症状です。その歴史は古く、約180年前、イギリスのパーキンソン先生が「振戦まひ」というタイトルで発表した病気です。

 その後、1960(昭和35)年に、脳内線状体で神経伝達物質である「ドーパミン」が著しく減少していることが明らかにされました。そしてL-ドーパの治療が開始されています。しかし、パーキンソン病の原因は現在もなお不明です。

 パーキンソン病の初期症状はどのようなものかとお尋ねです。パーキンソン病は、この「症状」が極めて大切です。なぜなら、パーキンソン病は最新の脳の検査(MRI、CTなど)でも診断はできません。パーキンソン病はその特有な「症状」の有無で診断される病気だからです。

 初期症状は震えから始まる人が60%、歩行障害が20%、動作緩慢が20%となっています。これらの症状は左右どちらかの上肢から始まるのが特徴です。その後、同じ側の下肢、続いてもう一方の側の上肢、下肢へと進行していきます。

 図はパーキンソン病患者のスケッチです。パーキンソン病の特徴的な姿勢を表しています。つまり頭部はやや後屈し、上半身が前傾し、ひじをやや屈曲させています。また左右どちらかに傾いています。

 「振戦」「固縮」「無動」の三大兆候のほかに、自律神経症状として、立ちくらみや便秘があります。精神症状としては抑うつ状態がよく見られます。病気が進行すると、痴ほう症を合併する症例もあります。

 現在の治療は、ドーパミン不足を補う治療法が中心です。その薬は<1>L-ドーパ製剤<2>ドーパミン受容体刺激剤<3>抗コリン剤-がよく処方されます。パーキンソン病の初期治療をどうするかは、長年の議論の結果、今では初期からL-ドーパなどを服用していただくようになっています。これら薬剤で日常生活は飛躍的に改善されてきておりますが、まだまだ十分ではありません。今後、パーキンソン病の原因が明らかにされ、根本的治療が開発されるでしょう。現在は脳内へのドーパミン分泌細胞の移植が試みられています。

 日常生活での注意は、抑うつ気分になる人が多いので、なるべく外に出かけ、何事にも積極的に取り組むことが大切です。

 終わりに、昨年11月に発足した全国パーキンソン友の会徳島県支部を紹介します。住所は徳島市上助任町天神425の14の223〈電088(624)4840〉です。

徳島新聞1999年5月30日号より転載

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