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【質問】 就寝中に手と腕のしびれ

 48歳のパートの主婦です。1年ほど前から、朝の布団から出る時間の2時間ぐらい前になると、手と腕がしびれます。それも横を向いて寝ているときだけで、上になっている方の手と腕がしびれます。つまり、左腕を下にしていると右腕がしびれ、寝返りを打って右腕を下にしていると、左腕がしびれます。起き上がると治ります。15年前にも朝方、手(腕はしびれなかった)のしびれが2~3年続いたのですが、自然に治りました。9年前には手のしびれがひどいうえ、はれて痛みが激しくなり、病院で診察を受け、薬を飲んで治りました。その半年後にヘルニアになり、1カ月ほど入院し、5年ほどかけて治しました。手と腕のしびれも、初めは毎朝しびれていましたが、最近は2日に1回ぐらいです。原因と治療法を教えてください。



【答え】 胸郭出口症候群 -肩周辺の筋力強化を-

中川整形外科 院長 中川 幸夫(板野郡藍住町勝瑞)

 腕や手のしびれを起こす原因としては、首の骨、頚髄(けいずい)、脳、末梢神経、血管、自律神経などの異常のほか、心因性、糖尿病なども考えられます。

 質問にある腕や手のしびれは一過性で、腕の位置を変えたり、起きたりすることで治るとのことです。従って、首から下の部分で、神経や血管が圧迫されることで起きるしびれが考えられます。正座の時にしびれるのと同じと考えてください。

 それだけであれば放置しても差し支えありません。しかし、以前から何回か手のしびれがあり、それが数年間続いたり、はれや痛みが伴っていたとのことですので、基礎疾患として「胸郭(きょうかく)出口症候群」の存在が考えられます。

 これは首の筋肉、鎖骨、第一肋骨(ろっこつ)、胸の筋肉などが、鎖骨の下を通って腕に延びる神経や血管を圧迫し、手や腕のしびれ、痛み、はれ、だるさ、肩こりなどを起こす者です。


 主なものに、▽首の骨と肋骨をつなぐ頚肋(けいろく)や第一肋骨の奇形などにより血管や神経を圧迫する「頚肋(けいろく)症候群」=イラスト参照、▽腕を上げて外に回すと、胸の筋肉が緊張する「過外転症候群」、▽首の筋肉が異常を起こす「斜角筋症候群」、▽胸を張り、肩を後下方へ下げる姿勢をとったときに血管や神経を圧迫する「肋鎖(ろくさ)症候群」-などがあります。

 薬は、末梢神経障害の治療薬として、ビタミンB1、B12、末梢循環改善剤が効果的と考えられます。

 治療法としては、肩を持ち上げる挙上運動や首の運動などがあり、首や肩の周辺の筋肉をリラックスさせ、同時に腕立て伏せなどで肩周辺の筋力を強化してください、寝るときは腕による圧迫を避けるため、抱きまくらの上に腕をのせて寝るなどの工夫も一つの方法でしょう。

 症状が強く、これらの方法で効果のない場合は手術もあります。一度、整形外科専門医の診断を受けられることをお勧めします。

徳島新聞1999年4月18日号より転載

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