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【質問】 激しい耳鳴りで眠れない

 やせぎみの少し神経質な66歳の主婦です。激しい耳鳴りや眠れないことがあり、そのためか、不安感やイライラ、集中力低下、記憶低下が起きてきました。以前から、たまに偏頭痛があります。直接の原因は分かりませんが、1年前に水虫の薬を服用後、体の不調を感じ、その後いろいろな薬を服用して、そのころから悪くなりました。耳鳴りは脈と同様、波が打つように大きくズキンズキンと鳴ります。夜眠れないので、自律神経調整剤、精神安定剤、睡眠誘導剤を服用しています。しかし、耳鳴りは変わらず、強い薬では昼が眠く、弱い薬では夜眠れません。頭が重く、時々どうきがして血圧の変動が起こり、尿の回数も多いのです。内科の循環器系の診察では悪いところがなく、脳外科のCT、耳鼻科でも異常がありません。10カ月前から精神神経科で治療中ですが、よくなりません。



【答え】 自律神経失調症 -定期的な通院望ましい-

やまぐちメンタルクリニック 院長 山口 浩資(徳島市寺島本町3丁目)

 自律神経失調症と思われます。検査で異常なしといわれても、実際に体調が悪いのだから何とかしてほしい、「気楽に生活しましょう」なんて説明で終わらせないでほしい・・・。そんな切実な訴えが聞こえてきそうです。

 自律神経失調症の患者さんは内科、耳鼻科、脳外科などさまざまな科を受診した後、最後に精神神経科を受診することが多いようです。今回ご相談の患者さんは、10カ月間も精神神経科に通院しておられるわけですから、「もう行く病院がないよ、どうしよう」という切羽詰まった事情ではないかとお察しします。

 治療する側のお医者さんは、どんな風に感じているのでしょう。

 自律神経失調症なんて病気、ほんとにあるの?おいら知らないよ。自律神経失調症の患者さんは話が長いし、次々に訴えが変わるんだもん、忙しいときに困るよ。強い安定剤を処方したら眠いって言うし、弱い睡眠導入剤では眠れないと言うし、そんなちょうどいい薬ないよ・・・。

 こちらの方からも愚痴が聞こえてきます。自律神経失調症というのは患者さんばかりか、お医者さんをも追いつめてしまう恐ろしい病気です。自律神経失調症の治療は一筋縄ではいきません。

 66歳の主婦といっても、体質や体力に個人差があります。若いころから体を使うアルバイトに従事してきたとか、事務仕事を20年間やってきたとか、長い期間繰り返してきた生活習慣は身体に刻み込まれています。

 「子どもを3人育てたけれども、みんな一人前になって都会に行ってしまった、代わりに室内犬を飼ってみたが、しつけがうまくいかない」「二世帯住宅を建てて長男家族と同居を始めたが、ゴミのまとめ方で嫁とけんかした」「夫が毎日会社に行ってくれていればのんびりできたけど、夫が退職すると、毎日昼ご飯を作らないといけない」・・・。

 みんな大変なんです。そして、同じ悩みなんてありません。一人ひとりが違う立場で違う条件で、そして何よりも違う脳で考えているわけです。

 随分話がそれましたが、自律神経失調症の治療は一人ひとり手作りです。ある人には毎日ラジオ体操をしてもらったら良くなり、別の人には毎日決まった時間に昼寝をしてもらったら良くなりました。だけど、物まねはうまくいきません。一人ひとりの人生が違うのと同じように、一人ひとりの脳も違っています。ラジオ体操がぴたっとはまる脳もあれば、昼寝がいい脳もあるわけです。

 自律神経失調症はこんなややこしい病気です。その治療には当然、手間暇がかりります。だから、近くの通院しやすい病院で治療するのが一番です。できれば1週間に1回程度、定期的に通院できるのが望ましいでしょう。

 必ずしも精神科や神経科にこだわる必要はありません。病院の看板は内科でも外科でも、治療していただける先生と信頼関係ができれば、症状の改善は十分期待できます。病院が混んでいる時間帯は避けて受診しましょう。先生が少しでもゆったりとあなたの話が聞けるように。

徳島新聞1999年3月7日号より転載

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