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【質問】 ただれてくるのでは・・・

 83歳の女性です。14~15年前にリュウマチで寝たきりになったとき、おむつを使ったのですが、尾てい骨の周りに湿疹(しっしん)ができました。現在は元気に歩いていますが、湿疹は完全に治っていません。薬を塗ると、そのときは良くなるのですが、また悪くなります。将来、寝たきりになり、またおむつを使った場合、そこがただれてくるのではないかと心配です。どうしたらよいでしょうか。



【答え】 おむつかぶれ -よく洗い まめに交換-

浦田病院 皮膚科部長 重見 文雄(板野郡松茂町広島)

 湿疹とは本来、診断名として定義された言葉ですが、皮膚にできたかゆいものの俗称になっているようです。ご質問から判断しますと、「尾てい骨の周りにできた湿疹」は「おむつかぶれ」であると思われます。

 おむつかぶれは、子どもを育てたことのある人なら、一度は経験していると思いますが、高齢化社会の今日では、おむつをした寝たきりの老人が増え、おむつかぶれが増えています。

 おむつの当たる所がカサカサしたり、おしり全体が赤くなり、ぶつぶつが出たりします。ひどい場合には、ただれたようになり、皮膚がくずれることもあります。

 原因としては、おむつの刺激、尿による皮膚のふやけ、アルカリ尿、ふん便中の酵素類による刺激-などが挙げられます。特に下痢のときはひどくなります。また、カンジダがおむつかぶれの上に感染する(皮膚カンジダ症)と、治りにくくなります。

 カンジダとは、酵母菌の一種で、健康な人でも口の中や消化管、腟内に常にすみついているカビです。便からも見つかります。おむつをしてむれると、カンジダが増殖しやすい温度と湿度が保たれるので、肛門から周囲の皮膚へと感染が広がります。

 おむつかぶれは予防が大切です。そのためには吸湿性のよいおむつを使い、むれないようにまめに交換することです。尿や便で汚れていれば、ぬるま湯で洗いましょう。石鹸を使うのもよいと思いますが、洗った後、乾燥し過ぎるようでしたら、白色ワセリンや亜鉛華軟こうを薄く塗ってください。消毒剤などを使う必要はありません。消毒剤は時に皮膚を刺激することがあります。

 このように注意しても、おむつかぶれになることがあります。そのような場合は入浴して、せっけんでおしりを洗い、弱い副腎(じん)皮質ホルモン軟こうを1日2回塗ります。 カンジダが見つかった場合は、副腎皮質ホルモン軟こうを使ってはいけません。でんぷんを含むパウダーもダメです。逆にカンジダが増え、おむつかぶれがひどくなるからです。カンジダを殺す抗真菌剤を塗る必要があります。これも時に皮膚を刺激し、カンジダが消えても、おむつかぶれが残ることがあります。

 おむつかぶれが長引くと、皮膚の防御機能が壊れるため、治っても刺激を受けやすくなり、種々の皮膚病ができやすくなります。

 ご質問の湿疹も、おむつかぶれと無関係ではないでしょう。いま使っている薬で完治しないなら、少し強い外用薬に代えたり、抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤などを飲んだり、湿疹が治った後も、再発を防ぐために保湿剤を塗っておくのも一つの方法と思います。

 いずれにせよ、外用薬は湿疹の状態に合うものでなければ良い効果が得られません。一度、皮膚科医に診てもらうことをお勧めします。将来のことは心配せず、今できている湿疹の治療に専念してください。

徳島新聞1999年2月7日号より転載

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