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【質問】 治したい耳の聞こえの悪さ

 47歳のパート勤務の主婦です。耳の聞こえが悪く、困っています。電話の呼び出し音や電話に出たときの相手の名前、小鳥の鳴き声などが聞き取りにくいのです。大勢の中で小さな声で話をするときも、前後の話が分からなくなり、途中で止まったり、間違いをよくします。5、6歳ころ腎臓を悪くし、何カ月か自宅で寝たり起きたりし、運動もだめという生活をしました。このときの治療で、薬(クロマイ)を1回に2錠、1日3回のみ続けて回復しました。知人は「耳の聞こえが悪いのは、クロマイがよくなかったのでは」と言います。小・中学校の健康診断での聴力検査は、いつも「異常あり」でした。耳鼻科に通ってもよくならないので、途中で行かなくなります。最近は、特に耳の聞こえがよくありません。いい補聴器があるのならとも思っていますが、もし治るのであれば、よい方法を教えてください。



【答え】 内耳性難聴 -軽いうちに補聴器を-

関根耳鼻咽喉科 院長 関根 惟和(徳島市二軒屋町3丁目)

 質問から判断すると、あなたの難聴は「内耳性難聴」と思われます。音はまず外耳道(耳の穴)を通って鼓膜を振動させ、その内側にある中耳の耳小骨という小さな三つの骨で内耳に伝えられ、その内耳で振動を音として感じます。

 これらのどの部分の障害でも難聴は起こるのですが、外耳道から鼓膜、中耳の障害によるものを「伝音性難聴」、内耳の障害などによるものを「感音性難聴」、その両方が原因である場合を「混合性難聴」と言います。

 伝音性難聴は中耳などで起こりますが、音を感じる部分の障害ではないので、音さえ大きければ聞き取りにくいということはありません。これに対し、感音性難聴は、高音域から聞こえが悪くなるのが普通で、音の内容を識別する能力が低下します。いわゆる「こさい」が分かりにくくなる、と表現される人に多い難聴です。

 あなたの質問で、電話の相手の名前、小鳥の鳴き声、大勢の中での話が分かりにくいというのは、この感音性難聴の症状です。感音性難聴には内耳性難聴と、内耳から後ろの後迷路性のものとがありますが、あなたは内耳性難聴と考えられます。

 またその原因として、クロマイの服用を挙げておられますが、それは原因ではないと思います。クロマイ(クロラムフェニコール)は一時期、抗生物質療法の主役として使われた薬品ですが、再生不良性貧血などの血液障害の副作用が判明し、使われなくなりました。しかしこの抗生物質に耳毒性(難聴を起こす副作用)はありません。

 副作用として難聴を起こす薬剤には、キニーネ、ひ素化合物、ヘノポジ油、サルチル酸などと、ストレプトマイシン、カナマイシンなどのアミノ配糖体係薬剤、ある種の抗腫瘍(しゅよう)剤があります。前者の多くは治りますが、後者は治りません。

 耳毒性について簡単に紹介しましたが、知人の方はクロマイとストレプトマイシンを取り違えて言われたのでしょう。「あの時クロマイを飲んだから耳が悪くなった」と悩むことはないと思います。

 質問の中で、特に中耳炎になったという話もないので、あなたの難聴の原因は、おそらく小さいときから内耳性難聴があり、年をとるとともにひどくなってきたのではないでしょうか。

 一度耳鼻科を受診され、聴力の検査を受け、適当な補聴器を紹介してもらって使用するのがよいと思います。難聴がやや軽いうちに補聴器を使うのが、補聴器に慣れる良い方法です。

 質問の内容からだけで、将来、あなたの難聴が進むかどうかは判断しかねます。時々耳鼻科を受診され、聴力の変化をチェックすることが大切です。

1999年1月17日号徳島新聞より転載

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