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【質問】 子宮摘出で体調不良

 49歳の主婦です。40歳の時、子宮がんにかかり、子宮を摘出する手術を受けました。その後、更年期の症状がひどくなり、血液の流れが悪いためか冷え性で、時々手足に青いあざができます。肩凝りもひどく、1日に何度も電気マッサージをしています。最近は時々、頭がクラーっとします。車に乗っていて降りる時など、めまいがして、何かにつかまっていないと倒れそうになります。頭部のMRI(磁気共鳴映像装置)を受けてみようかと思っているのですが、どうでしょうか。



【答え】 更年期 -ホルモン補充治療を-

メイプルクリニック高橋産婦人科 前院長 高橋 正文(徳島市福島)

 子宮がんを手術で治療するとき、がんを残さないようにすることが最優先されます。子宮がんの手術方法は、がんの性質、進行度により◇子宮の一部のみ切除すればよい場合◇仕方なく子宮、膣、卵巣、リンパ節を含め、広範囲に摘出しなければならない場合-があります。

 広範囲に摘出した場合は、手術後、骨盤内の神経を損傷することによる排尿困難、尿失禁などの膀胱(ぼうこう)症状、強い便秘などの胃腸症状を引き起こします。さらに卵巣を摘出することにより、卵巣から分泌される女性ホルモンを失います。

 これに伴い頭痛、肩凝り、どうき、めまい、のぼせ、冷え、発汗異常、さらにイライラ、不眠、外陰部の違和感、性感異常などのいわゆる更年期症状、またリンパ液の流れが悪くなることによる下肢のむくみ、といったさまざまな後遺症が出てくる可能性があります。

 だが、子宮だけの摘出や、子宮と片方の卵巣のみの摘出で卵巣が温存されているときは、卵巣からの女性ホルモンの分泌は十分あり、体調は維持されます。従って、子宮を摘出したからといって、更年期症状がすぐ起こるとはいえません。

 逆に、子宮だけの摘出で卵巣が温存されていても、更年期症状を訴える方もいます。このような方は、月経がなくなったため早く更年期になったと信じ込んでいたり、他に大きなストレスを抱え込んでいる人に多いようです。

 あなたの場合は、子宮がんの治療を受けられて9年の期間が過ぎています。適切な治療でがんを克服されたといえるでしょう。しかし、病気の性質上、いつも再発や転移の心配をされて生活してきたと思います。健康面での心配事がストレスになってきたのでしょう。今、悩まれている症状は、更年期の症状が持続しているためのものでしょう。

 一般に、更年期は卵巣機能が衰えることにより、女性ホルモンの分泌が低下した状態を言います。実際の年齢では42歳ごろから56歳ごろまでのおよそ15年間の長い期間にみられ、その年齢には個人差があります。

 女性ホルモンが低下した状態が続くと、月経異常が起こり、やがて閉経となります。この時期に先のようなさまざまな症状が続くことを更年期障害といい、低下した女性ホルモンを補充することにより症状が和らぎます。

 最近は更年期だけでなく、高齢化に伴う将来の動脈硬化や骨粗しょう症を予防するため、長期にわたる女性ホルモン補充治療の大切さが強調されています。

 子宮がんの治療を受けた後でも、女性ホルモン補充治療をすることに問題はないとされています。女性ホルモン補充治療を中止されていませんか。また、最近出てきた症状に対して、適切な検査を受けることをお勧めします。がんを経験されている以上、定期的な健康審査は欠かさず、更年期を乗り切ってください。

徳島新聞1998年12月20日号より転載

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