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【質問】 体脂肪の率の高さに驚き

 40歳の主婦です。先日、健康センターで入浴した後、体脂肪計があったので測定したところ、体脂肪率29%で「肥満傾向です」と出たのでびっくりしました。身長は1.63mで、体重は55Kgです。体重が標準より少ないのに、体に脂肪が多いということでしょうか。今までずっとスリムな体だと自負してきたのに、「肥満傾向」との測定結果にショックを受けています。女性は脂肪が多いといいますが、多すぎると健康にどのような影響があるのでしょうか。日常生活は何の支障もありません。この体脂肪の数値を、どのように受け止めればいいのでしょうか。



【答え】 肥満症 -食事・運動療法が必要-

三谷内科 院長 三谷 裕昭(阿南市富岡町)

 肥満症とは、脂肪組織が過剰に蓄積した状態で、体脂肪率の増加を意味し、医学的に減量治療が必要です。ときには正常な体重でも肥満は存在するのです。

 その測定方法ですが、質問にあるような体脂肪計は「インピーダンス法」(電気回路に交流が流れたときの電圧と電流との比を測定する)による測定で、脂肪組織の電気抵抗が高いことを利用しています。一般的には、肥満の診断などに使う指標である「BMI=Body Mass Index」の「体重(キログラム)÷身長(メートル)の二乗」も、人間ドックなどで広く測定されています。

 体脂肪率の正常範囲は、30歳以上の女性が20~27%、男性が17~22%で、それぞれ30%、25%以上が肥満症とされます。従って「40歳、体重55キログラム、身長1.63メートル」の女性の場合、体脂肪率29%は肥満傾向ですが、BMI20.7は正常です。ただ体脂肪計の測定も、時間、皮膚水分量、発汗、脱水、食事などの影響を受けるため、一定の条件で行うことが大切です。

 肥満症は、男性型肥満(リンゴ型や悪性肥満)と女性型肥満(洋ナシ型や良性肥満)の二つのタイプに分類されます。近年、CTスキャンの解析により、男性型肥満は「内臓脂肪型肥満」、女性型肥満は「皮下脂肪型肥満」ともいわれ、前者に生活習慣病が多いとされています。

 両者とも、インスリン抵抗症候群に進む可能性があり、適切な食事・運動療法が必要となります。なお、BMIと疾病率との関係はJ字型=別図参照=を示し、女性21.9、男性22.2で最低となり、これが最も病気にかかりにくい数値となります。

肥満症

 肥満症に合併しやすい疾患として、内分泌代謝異常(糖尿病、高脂血症、痛風)、循環器異常(心筋梗塞=こうそく、高血圧)、呼吸器異常、整形外科異常(腰痛、関節炎)、婦人科異常などがあり、これらの疾病予防のために食事・運動療法が重要です。

 体脂肪1キログラムは約7,000キロカロリーあり、日本人の平均摂取エネルギーの約3日分にあたります。一般に、食事療法の目標カロリーは1日あたり「標準体重(キログラム)×20~25キロカロリー」で、これを長期間続ける必要があります。毎日300キロカロリーのエネルギーを30日間続けて減らせば、マイナス9,000キロカロリーとなり、体重は1キログラム以上減量できます。

 ただ、タンパク質や糖質、脂質、食物繊維、ビタミン、ミネラルのバランスが必要です。超低エネルギー食事療法もありますが、家庭療法としては危険を伴います。

 食事療法のみでは筋肉量も減るので、運動療法(循環器や呼吸器疾患のない人)は絶対に必要で、最大強度として「1分間の脈拍数=220-年齢」の50~60%を目安とします。

 しかし、いずれも継続することが最も重要です。体脂肪1キログラムを消費するためには100キロメートル以上歩くことが必要で、運動療法がいかに困難であるかが分かります。また、食事・運動療法も慣れてくると、当初の効果は認められなくなります。最近はなかなかやせにくい体質(β3アドレナリン受容体異常)も報告されています。とにかく「頑張りましょう!」。

徳島新聞1998年12月13日号より転載
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