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【質問】 心配な娘の大きなあざ

 28歳の主婦です。2歳になる娘のことですが、右腕の上の方に4×7センチほどの大きなあざがあり、気になっています。本人はまだ小さいので、何も分からないようです。でも、女の子でもあるので、小さいうちに何とか処置をしておいてやりたいと思っています。あざの色は薄茶色で、血管の固まりのような感じの青っぽいはん点が、全体に散らばるようにあります。皮膚の表面は滑らかで、盛り上がったりしていません。子どもはまだ小さいので、あまり刺激的でない方法で、きれいになる治療法はあるのでしょうか。また、全体にある青っぽいはん点も気になっています。



【答え】 母斑 -レーザー療法が福音に-   

花川皮膚科診療所 院長 花川 寛(徳島市鮎喰町)

 お話から「母斑(ぼはん)」が考えられます。

 母斑という皮膚の病気は胎児期から、多くは生後1ヶ月以内、ときには思春期以後など、生涯のさまざまな時期に症状が現れる皮膚の「限局性(限られた狭い)奇形」で、皮膚の色や形の異常となって発病します。ある一定の大きさまで発育すると、その後はほとんど変化が見られなくなる傾向もあります。

 発生に由来によっていくつかの種類に分けられますが、質問の症状からみて「へん平母斑」「母斑細胞母斑」「伊藤母斑」といった“メラノサイト(色素細胞)系母斑”が考えられます。

 「へん平母斑」は出生時あるいは出生後、ときには小児期に目立って現れます。皮膚のメラニン色素が増える病気で、色素斑は淡褐色から暗褐色です。そして、まだら模様の斑紋状か、そばかす様の小さい班点が認められる、数ミリから数センチの大きさの盛り上がりのない斑です。この母斑は悪性化する心配が全くありません。

 「母斑細胞母斑」は俗にいう、ほくろ、黒あざと呼ばれている病気です。神経細胞やメラニン色素をつくるもとになる「母斑細胞」が、胎児期に異常に発展し、皮膚に移動して発症するとされています。

 代表的な症状は、褐色から黒褐色の平らな、あるいは皮膚から盛り上がる発疹(はっしん)です。出生直後から見られるものは通常、直径が6ミリ以上あり、盛り上がりのないものから半球状などさまざまです。極めてまれですが、悪性化する例もあります。手の平や足の裏の発疹、比較的大型のもの、発疹部にかゆみや赤い色、発疹の拡大傾向がある場合は要注意です。

 「伊藤母斑」とは、生まれつきか乳児期に発症し、女子が男子より3倍多く、肩の辺りを中心に鎖骨上部、肩胛骨部、上腕外側に認められることの多い褐青色母斑をいいます。自然に消えることはありませんが、悪性化を心配することもありません。

 以上のようなケースが考えられますが、文面だけで判断はできません。

 また、悪性化の傾向が全くない母斑、悪性化を考えなければならない母斑のどちらにしても、実際の色調、大きさや表面、硬さ、形などの変化といった、さまざまな面から診断することが重要です。ぜひ皮膚科専門医を受診してください。

 治療は種類によって変わります。カバーマークといって美容的に化粧で隠す方法、グライダーという器材で機械的に皮膚を浅く削る皮膚剥削(はくさつ)術、液体窒素による冷凍凝固法、皮膚形成外科的切除など、いろいろな方法があります。

 最近は改良された多様なレーザーが母斑治療に使われ、優れた治療効果を上げているので、レーザー療法も有効と思います。レーザー療法に保険が適用されたとも聞いています。費用の点からも、レーザー療法は患者さんにとって福音だと思います。

徳島新聞1998年11月8日号より転載

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