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 夏らしい季節になると、冬から春に見られていた感染症の様相が少し変わってきます。冬の感染症の代表はなんと言ってもインフルエンザですが、最近インフルエンザは検査で簡単に診断されるようになり、今まで冬の間に限って流行すると考えられていたインフルエンザが4月~5月の初夏にも存在することが明らかになっています。ただ暑くなると明らかにインフルエンザと異なるかぜが増えて来る事も事実です。とくに、高熱を特徴とし、一般に夏かぜと呼ばれるウイルス感染症が増加してきます。夏かぜの代表はヘルパンギーナとプール熱ですが、中でもへルパンギーナは毎年、初夏によく見られます。この疾患はエンテロウイルスと呼ばれるウイルスが原因です。エンテロウイルスは口から入って咽頭と腸管粘膜に感染します。このウイルスの仲間はヘルパンギーナの他にポリオや手足口病を起こすことも知られています。またウイルス性髄膜炎の原因となることもあります。

 ヘルパンギーナは咽頭の発赤に加えて軟口蓋に小水疱や浅い潰瘍が出来、咽頭痛とともに39度台の高熱を来たし、発熱は1~3日間続きます。軽い嘔吐や軟便などの消化器症状が見られることもあります。頭痛や嘔吐が特に激しい時には髄膜炎の可能性も考えておかなければなりません。

 ヘルパンギーナの特徴は強い咽頭痛があることで乳幼児は食物を食べ難くなります。のどにしみるような刺激物や硬いもの、熱いものは食べ難いものです。高熱があって食欲がない時には水分を十分に補給し、脱水症の予防に注意することが大切です。安静に心がけて体力の消耗を防ぐようにすれば数日で熱が下がり元気になります。この病気の熱を下げるのに抗生物質は効果がありません。高熱がひどく全身状態が悪い時は解熱剤を使うこともあります。

2002年6月11日掲載

 前回まではウイルス感染にともなう発疹性疾患についてお話ししました。今回は細菌感染症の中で発疹が出る代表的な疾患、溶連菌感染症についてお話ししようと思います。従来、溶連菌感染症は猩紅熱と言われ、法定伝染病に指定されるほど伝染力が強く抗生物質のない時代には恐い病気とされていました。溶連菌感染症は発熱や咽頭痛と発疹を特徴とする病気ですが、咽頭炎や扁桃炎の原因として溶連菌が検出されることは珍しいことではありません。リウマチ熱や急性腎炎などが溶連菌感染症の後に発病することが知られています。従って、発疹の出ている間に正確に診断をつけて確実に治療する必要があります。

 溶連菌は春から初夏に流行が見られることが多い疾患で、発熱とともに発疹が出現します。発疹は手足の先から上下肢へ広がり、外陰部や頚部から腹部や背中へ、また顔面へ拡大して徐々に全身い広がります。最初は粟粒大の発疹ですが癒合して紅斑になり、かゆみを伴います。この時期に高熱、咽喉炎・扁桃炎を示し、舌はいちご状に赤くなります。顔面も発赤しますが、口の周囲のみ蒼白になります。発疹は後に薄く皮が剥け全身が糠状になることがあります。最近は咽頭炎の存在だけで抗生剤の投与が早めに行われるようになったために、典型的な猩紅熱を見ることは稀になりました。

 溶連菌には比較的、抗生物質がよく効くために初期の治療に悩むことはありません。ただし発熱などの症状がとれただけで、早期に治療を止めてしまうと溶連菌が再び出現するため、初期の治療に続いて7~10日間くらいの抗生物質の投与が必要だと考えられています。きちんと服薬している患者さんについて、発熱や咽頭痛などの急性期の症状がなくなれば、発疹が残っていても、咽喉から溶連菌が出ることはありません。従ってこの時期に患者さんを隔離する必要はありません。

2002年5月28日掲載

 風疹は最近あまり流行が見られなくなりましたが、以前はほぼ8年ごとに流行が見られていました。妊娠初期に風疹にかかると、先天性風疹症候群という奇形児が生まれる原因になります。風疹ワクチンの普及で風疹の流行があまり見られなくなりましたが、最近はワクチンの接種率が低下していることから、いつ風疹の大流行が起こってもおかしくない状態になっていると考えられます。風疹の症状自体は比較的軽いものですが、様々な合併症が見られることと、妊婦がかかった場合、その妊娠の時期によって先天性風疹症候群出生の可能性があるので軽視してはいけません。

 風疹の発疹は麻疹の発疹に似ていますが、麻疹のように先行する発熱や咳・鼻汁などの風邪症状はなく、発熱と同時に発疹が出現して3日ほどで消退します。特徴としては頚部のリンパ節の腫脹が見られます。風疹の合併症として、脳炎、関節炎、紫斑病などがあげられます。風疹脳炎を経験したことがありますが、この時のけいれん重積はほとんどの薬剤に反応しなかったように思われます。しかしけいれんが治まった後の経過は良好で後遺症を残すことはありませんでした。一般に風疹脳炎は予後良好な疾患とされています。

 風疹の非流行時に発疹だけを見て診断をつけるのと様々な発疹性疾患が紛れ込んでくる恐れがあります。麻疹、突発性発疹症、エンテロウイルスなどに伴う発疹は紛らわしいものです。

 妊娠中に風疹にかかると胎内で胎児がウイルスに侵されると、重症の場合には胎内で死亡して流産の原因となります。内臓の原器が出来る時期に傷害されると奇形の原因になります。妊娠の時期によって奇形の種類や重傷度が変わってきます。脳神経系、心血管系、視聴覚系などの奇形がよく知られています。

 風疹ワクチンは病気になじみがないためについつい忘れがちですが、そのために風疹が流行するようなことになってはなりません。

2002年5月21日掲載

 伝統力の強い病気の中には発疹が出現するものがありますが、その中でもよく見られるものに水痘があります。水痘は水痘帯状疱疹ウイルスが原因で起こり、初感染では水痘を発病し、その時に神経節に潜状したウイルスによって何年も経ってから帯状疱疹が発病します。水痘の症状には個人差が大きく、軽い発疹のみで終わってしまうものから、重症で致命的な症状に進んでしまうものまであります。

 水痘は一般に初冬から春先に流行するとされていますが、潜状期間が2~3週間と長いために、保育園などでは一度発生すると流行が長く続くことになります。

 水痘の発疹は、紅斑、丘疹、水疱の順に出現し、水疱の内容が濁って膿疱になり、次いで痂皮を形成します。水疱は腹部や背中から出て徐々に手足に広がっていきます。頭部や外陰部に出ることも特徴です。水痘の症状には大きな個人差が見られます。小さな水痘が少し出ただけで熱が出ることもなく、数日で完全に治ってしまうような軽症のものから、高熱が続き発疹も全身に隙間なく出現し手の平や足の裏まで出現するような重症のものまであります。体力のない新生児・乳児や免疫力の低下した子どもでは重症化することが予想されます。重い基礎疾患のために免疫抑制剤やステロイドホルモンを使用している時には水痘は重症化することが知られています。これらの子どもには絶対に水痘に接触させてはいけません。また成人が水痘にかかると重くなることが知られています。兄弟が保育所や幼稚園で水痘をもらってくると家庭内でうつし合いますが、一般にうつされた側が重くなる傾向があります。

 水痘の治療には抗ウイルス剤を使用します。発病直後の早期にこの薬を使用すると軽い水痘で終わらせることができます。水痘ワクチンの効果は完全なものではありませんが、軽症化に役立つことは確実です。

2002年5月14日掲載

 子どもが初めて発熱する原因疾患の中で多いのは突発性発疹症(突発疹)ですが、思わぬ合併症に出会うことがあります。今回は突発疹などの発熱に伴う合併症の代表である熱性けいれんについてお話しします。

 突発疹など高熱が出る疾患に出会うと、よく「ひきつけませんか」と質問されます。特に、突発疹の発熱は高熱でありながら比較的機嫌が良いためついつい家族を安心させるために「心配ありませんよ」と言った後、ひきつけを起こしてしまいあわてることがあります。しかし多くの場合、熱性けいれんは自然に治まるので心配することはありません。熱性けいれんは誰にでも起こる可能性がありますが、両親や兄弟などなどに発作を起こす人がいれば危険性が高くなります。初めての発熱でけいれんを起こすかどうかを確実に予測することは出来ません。熱性けいれんは熱が出た時に起こる発作性の疾患で全身の筋肉が強く収縮したり、意識を失ったりするものです。熱性けいれんには回数が少なく持続時間も短い自然に治ってしまう単純なものと、発作回数が多くて長く続くものや、神経症状を伴うような複雑なタイプのものがあります。初めての熱性けいれんでこれをはっきり鑑別することは出来ません。ただ熱性けいれんと、これ以外の脳炎や髄膜炎などの中枢神経疾患を区別する必要があります。

 熱性けいれんが起こった時の処置として、まずあわてないことです。ほとんどのけいれんは1分くらいで止まりますから、起こり始めからしっかり観察して下さい。持続時間は、手足の位置は、眼球の位置は、意識は、顔色の変化は、嘔吐はないか、よく見ていないと大切な症状を見逃してしまうことがあります。そして安静です。発作中にたたいたり揺すったりしてはいけません。歯をかみしめている時に無理やりこじ開けてなにかを噛ます必要はありません。

2002年4月23日掲載

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