徳島県医師会 トップページへ

  • 文字サイズ標準
  • 文字サイズ拡大
文字サイズ変更について
県民の皆さまへ

【質問】 手の指の関節曲がり痛む

 60代の女性です。8年前から手の指の関節が曲がり始めました。整形外科を受診すると、加齢による「ヘバーデン結節」と言われました。最近は曲がり方がひどく、寒いときはズキンズキンと痛んで、こわばり感もあります。治療方法やいい薬はないのでしょうか。温めたりマッサージをしたりしていますが、日ごろはどう対処すればいいか教えてください。今後どうなるかも不安です。



【答え】 へバーデン結節 -動きを制限し負担軽く

こまつばら整形外科院長 小松原慎司(板野郡北島町中村)

 ヘバーデン結節は、手の指先から1番目の関節が赤く腫れたり、曲がったりして結節(こぶ)状となる病気です。一般に、40歳以降の女性に多く発症します。19世紀初め、英国のヘバーデン博士が報告したことから名付けられました。

 加齢などさまざまな原因で、関節の軟骨がすり減って起こります。一時的に炎症を起こし、赤く腫れて熱をもち、自発痛を生じることもあります。関節のすき間が次第に狭く、こぶ状となり、関節が動きにくくなったり(可動域制限)、曲がったり(変形)、運動時に痛みを生じたりします。

 診断は、エックス線検査で、第1関節のすき間が狭くなったり、骨のとげ(骨棘(こっきょく))が生じたりしていないかを確認することから行います。指先から2番目の関節が赤く腫れて曲がることが多い関節リウマチとは異なります。

 一般には、一定期間経過した後、軽度の可動域制限や軽い変形は残るものの、疼痛(とうつう)は自然に軽減することが多く、著しい機能障害を来すことは少ないといわれています。

 指の変形が進行した状態で固まると、握力低下や、つまみ動作が困難となることもあり、変形の進行を防ぐためには、痛みが起こったら早めに整形外科を受診することが大切です。エックス線検査などを行って診断を受け、適切な治療を行うことで変形の進行を抑え、痛みを軽減することができます。

 治療の基本は、患部を安静にすることです。テーピングで関節の動きを制限することも有効です。炎症を起こして疼痛が生じている時期には、消炎鎮痛剤の内服や外用剤(湿布や塗り薬)を使用することもあります。

 既に変形が始まっているときは、関節をまっすぐに矯正した状態でテーピングし、変形の進行を防ぐこともあります。手の血行が悪い状態では炎症が改善しにくいと考えられており、温熱療法などで血行をよくすることも大切です。

 手術が必要となることは多くありませんが、保存療法を行っても痛みが持続したり、変形が進行して日常生活に困ったりするときには、手術療法(関節固定術や関節形成術)が行われることもあります。

 日ごろの対処法としては、ヘバーデン結節による指の変形、疼痛を防ぐために、物をつまむ、指先で重い荷物を持つなどの、指先への負担が大きい動作を控えることが大切です。

 例えば▽裁縫にはできるだけミシンを使う▽袋を開けるときははさみを使う▽重い段ボールを持つときには指先で支えずに取っ手を利用する-など、指先の負担を減らす工夫をお勧めします。仕事などで指をよく使う人は、あらかじめテーピングをして作業するのも、指先に掛かる負担を軽くする良い方法です。

 ご質問の方は、曲がり方(変形)がひどく、疼痛も強いようなので、関節リウマチなど炎症性疾患との鑑別や、変形の進行を防ぐテーピングや手術療法の検討も含め、再度、専門医を受診してエックス線検査を受けることをお勧めします。

徳島新聞2011年5月1日号より転載

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.