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【質問】 娘の黒目が中心寄りに

 5歳の女児のことで相談です。半年ぐらい前からじっと見つめると黒目の部分が中心の方に寄っているのです。普通にしているときは分かりません。写真を撮るとよく分かります。斜視と思って眼科を受診しましたが、視力も普通(左右とも1.2)でした。さまざまな検査をしたのですが、斜視の症状もなく、もう少し様子を見ることになりました。矯正する眼鏡があるとも聞きましたが、それはどんな眼鏡でしょうか。このまま放っておいても大丈夫でしょうか。



【答え】 調節性内斜視 -娘の黒目が中心寄りに-

徳島大学医学部 眼科助手 四宮 加容

 左右の視線がそろっていない状態を斜視といいます。視線が内側にずれる内斜視、外側にずれる外斜視、上または下にずれる上下斜視などがあります。斜視があると、物を立体的にとらえたり、遠近感を感じたりする両眼視機能が使えません。

 質問の女児は「黒目が中心の方に寄っている」とのことですので、内斜視と考えられます。また、じっと見つめると斜視が起こるようなので、内斜視の中でも調節性内斜視が最も疑われます。

 ここで調節性内斜視について説明します。人間の目には調節というピントを合わす機能があります。この調節が働くときは、輻輳(ふくそう)という寄り目にする機能も同時に働くようにできています。調節も輻輳も普通は近くを見るときに使います。しかし、遠視があると、そのままではピントが合わないので、調節機能を使用して何とかピントを合わせて見ようとします。すると同時に輻輳が働き、内斜視になります。この状態が調節性内斜視です。

 検査では、まず遠視がないかどうか調べます。小児は調節力が強いため、大人のように普通に屈折や視力検査をしても正確には測れません。そこで、アトロピンという調節を麻痺(まひ)させる点眼薬を使用します。1日2回、7日間点眼し、屈折を測定します。視力が良くても精密検査をすると、遠視が発見されることがあります。そこで遠視があれば、調節性内斜視という診断が付きます。

 治療は、遠視を矯正するための眼鏡を装用します。調節を取り除いた状態で測った度数の眼鏡を処方しますので、1日中(入浴と睡眠時以外)かけてもらいます。眼鏡だけで治る斜視の場合は、装用後3カ月以内に治ることが多いです〈図1参照〉。眼鏡をかけても、斜視が強く残る場合は手術を行うこともあります。

 また、遠視はなくても近くを見たときに輻輳が異常に強く働いて内斜視になる状態(非屈折性調節性内斜視)であれば、眼鏡を処方します。この場合は眼鏡レンズの下方にプラスレンズが入った眼鏡をかけてもらい、近くを見るときにこのレンズを通して見るようにしてもらいます。二重焦点レンズや累進多焦点レンズで、いわゆる老眼の人が使う遠近両用眼鏡のようなものです。

 なお、小さい子どもの場合は偽斜視という状態もあります〈図2参照〉。内側の白目の部分が少ないため、内斜視に見えるというものです。実際は両眼の視線はそろっており、両眼視機能も問題ないという状態です。その場合、治療は必要ありません。

徳島新聞2006年3月26日号より転載

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