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【質問】 指先の関節 硬くなり反らせず

 60歳の主婦です。この1年間くらいで、右手中指の指先が太くなり、「くの字」に曲がってしまいました。指先を使うと痛みがしたのですが、最近では指先を使わなくても時々、痛みます。また、両手の指先の関節が少しずつ硬くなって、反らすことができないのもあります。他の関節も同じようになるのではないかと心配です。治療法や予防法などについて教えてください。



【答え】 へバーデン結節 -患部冷やさないこと大切-

津保整形外科 津保 雅彦(鳴門市大麻町桧)

 手指の指先(第一関節)の変形や痛みを来す疾患には、へバーデン結節(変形関節症)、慢性関節リウマチ、乾癬(かんせん)性関節炎、石灰沈着性関節炎、痛風などがあります。慢性関節リウマチ、痛風などは血液検査で容易に診断され、鱗屑(りんせつ)などの皮膚症状が認められれば、乾癬性関節炎を疑います。痛風や石灰沈着性関節炎では急性期に発赤、膨張、熱感を伴う耐え難い激痛を起こします。

 質問の女性は内容から、第一関節が罹患するへバーデン結節と思われます。この疾患は合併症がない限り、赤沈値、末梢(まっしょう)血液一般検査、血清学的検査に異常が認められません。1802年、英国人医師・へバーデン氏が手指の第一関節背側に慢性関節リウマチや痛風と異なる結節が生じると指摘したのもので、従来は発症年齢がだいたい45歳以上で、圧倒的に女性が多く、男性は発症の平均年齢が高いとのことでした。しかし、最近では圧倒的に女性に多いのは痛みを伴う頻度であり、痛みのない頻度も含めると男女差なしとの報告もあります。明確な遺伝性は認められていませんが、家族間で多発する例は認められています。

 原因は外傷のほか、甲状腺疾患、糖尿病などに合併して発生する場合(若年層の発生頻度が高い)があります。質問の女性にこれらがなければ、特発性と考えられます。また、生活歴も関係があり、外傷を除いて裁縫、農業など手仕事をよくしていた人に多いといわれていますが、8割が主婦との報告もあります。


 手指の変形は屈曲変形、側方への曲がりなど多様ですが、いずれも第一関節に骨性の盛り上がり(骨棘(こっきょく))があり、時に柔らかい腫れ(粘液嚢腫(のうしゅ))を伴うことがあります。〈写真〉の患者さんの場合、人さし指は親指の方へ、薬指、小指は親指と反対の方への曲がりが顕著です。一般的に人さし指、中指、小指、薬指、親指の順に多いとされ、質問の女性も中指以外にも生じていると考えられます。

 治療に関しては発赤、熱感、痛みの強い急性期には冷湿布、非ステロイド系消炎鎮痛剤の軟膏(なんこう)塗布、または内服薬投与を行います。場合により、ステロイドの関節内注射を行うこともあります。発赤、熱感が軽減・消失して痛みだけのときは、温熱療法が良い効果をもたらします。

 変形や関節の動揺性が著しく、日常生活に支障がある場合は、関節固定の手術をします。結節が大きく、変形が強いときは、結節および骨棘の切除を行うこともあります。

 結節部に粘液嚢腫がある場合は、外科的手術が勧められますが、再発しやすく、皮膚が薄くなりやすいため、皮膚も含めての切除が必要なことがあります。へバーデン結節は退行性病変であり、多少の変形を残すが一定期間で無痛性となるので、治療を要しないこともあります。日常生活では急性期を除いて、患部を冷やさないことが大切で、入浴時にゆっくり手指を動かすとよいでしょう。

 診断は臨床症状、レントゲン所見などによって容易ですので、一度整形外科医を受診し、診察とレントゲン検査に加え、念のために血液検査(リウマチテスト、赤沈値、CRP、末梢血液一般検査、尿酸値など)を受けることを勧めます。

徳島新聞2003年1月26日号より転載

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