日本産婦人科医会 徳島県支部      


 子宮筋腫と子宮腺筋症
 子宮筋腫と子宮腺筋症  
子宮が大きくなる良性疾患として主に子宮筋腫子宮腺筋症があります。
     
 A)子宮筋腫 
     
 子宮筋腫は子宮筋層に発生する良性腫瘍(平滑筋腫瘍)で、婦人科腫瘍疾患の中で最も高頻度に見られます。子宮筋腫の発生には、卵巣の働きが関係しており子宮筋腫の芽ともいうべき筋腫核が、卵巣から分泌される女性ホルモンの作用によって増殖腫大すると考えられ、腫瘍の大きさや数は様々で、性成熟期(子どもが生める体)の女性の大半が子宮筋腫をもっています。
     
 子宮筋腫の発生する場所によって4つに分けられます。
1. 筋層内筋腫
 子宮筋層内に発生し頻度はもっとも多いが、自覚症状は少なくかなり大きくなるまでは存在に気がつかない。巨大化すると、下腹部を触るとしこりを感じるようになり、圧迫症状、頻尿、尿失禁、尿閉、月経過多、貧血などの症状がある。
2. 漿膜下筋腫  
 子宮の外側に向かって大きくなり、有茎性の発育をする。
 かなり大きくなっても症状が出にくいが、有茎部の茎捻転による疼痛が見られることがある。
3. 粘膜下筋腫
 発生率は少ないが、症状は最もきつく、筋腫が小さなうちから月経多過や不正出血の症状がみられる。有形性粘膜下筋腫、筋腫分娩になることもある。筋腫分娩時には陣痛用の痛みも認められる。
 不妊症、不育症の原因にもなる。
4. 頚部筋腫 
 頻度は少ないが、妊娠時には分娩障害となる。
     
 
子宮筋腫にはどんな症状があるの?
 筋腫が小さいうちは、自覚症状が見られない場合が多いようです。日常の生活に支障をきたすこともなく、生涯無症状の人もいるくらいです。それは成長するスピードや部位にもよるのですが、一般的には、月経多過や不正出血、貧血、動悸、息切れなどが現れます。また、ひどい月経痛や下腹部の痛み、頻尿や便秘などにも悩まされるようになります。
1.症状
 過多月経
 月経時に凝血がある
 月経時に、下腹部の痛みや張り、腰痛、下痢、便秘などが起こる。
 月経以外の時期に、少量の不正出血がある
 淡黄色の水溶性帯下
 頻尿や失禁症がある
     
 
子宮筋腫の診察方法
1. 触診(双合診) 
  膣と腹部からの双合診似て子宮や卵巣、膣などについて、腫れや硬さ、弾力などを調べます。   
2. 超音波診断
腹部に超音波をあて、おなかの中の画像を取る方法と、腟の中に器具を入れて、体の中から直接写す(腟エコー)方法があります。腟エコーのほうが画像が鮮明に取れるため、大きさ、発生部位が判りやすい。
3. CT検査
 コンピュータとX線走査装置を用いて体の精密な断層画像を見ることができます。
4. MRI検査
放射線を使わずに、あらゆる角度から筋腫の大きさ、部位、悪性化などの筋腫内の変化を診断できる。
 子宮筋腫核出術の場合は子宮筋腫の位置や個数の確認にはMRIは重要である。
     
 子宮筋腫の治療方法
診断が明らかで症状もなく、挙児希望画ない場合は定期的な検診を行う。
治療の必要な筋腫は、
1. 貧血、過多月経、圧迫症状などがある場合
2. 挙児希望があり不妊症、不育症がある場合
3. 画像診断にて平滑筋肉腫や悪性疾患の可能性がある場合
     
 
治療
1.対症療法<症状を和らげる>
1. 止血剤 : 月経過多、不正出血
2. 鎮痛剤 : 月経痛
3. 増血剤/鉄剤 : 貧血
4. 漢方薬 : 症状の軽減を図れるが、人によって効果の現れ方に差がある。
薬の使用をやめると再発するが、筋腫が小さく症状の軽い人や妊娠中の人、更年期の女性などに適している。
閉経以降は筋腫の発育が抑えられ、加齢とともに萎縮していくため、再発の可能性は小さく自然に治癒していく場合もあります。どちらにしても、定期的に通院して症状に応じたお薬を処方してもらいましょう。

2.薬物療法
 ホルモン療法(飲み薬や注射などで女性ホルモンの分泌を抑える)
子宮内膜症の治療に用いられる合成ホルモン剤のプセレリンやタナゾール」を処方。エストロゲン(女性のホルモン)の分泌を抑えて、人工的に閉経状態にして、筋腫を小さくしていく。
しかしピルの長期投与の影響に関してはコンセンサスが得られていない。黄体ホルモンの長期、大量投与は筋腫の増大、悪性化にも留意が必要である。
 GnRH アゴニスト
GnRH アゴニストによる偽閉経療法は2から3ヶ月で30から50%の縮小が期待できるが、中止にて4から6ヶ月で元の大きさに戻る。長期投与による骨量の低下などの副作用があり、@手術までの貧血の改善A筋腫を縮小させ膣式手術を行う目的B閉経が近い患者に閉経を期待して短期間使用されている。
3.手術療法
月経多過、出血による貧血、ひどい月経痛、不妊、早流産などの弊害が考えられる場合は女性としての生活の向上のためにも、この療法による治療を積極的に考えてみて下さい。

 1. 筋腫核出術    <筋腫のみを摘出する> 
   対象者  妊娠を希望する女性 
   方法   子宮筋腫の部位大きさで異なるが、開腹で行う、腹腔鏡で行う、子宮鏡で行う場合がある
   問題点  目に見えない小さな筋腫核は取れないため、再発の可能性が高く、再び手術をしなければいけないケースがある。(治療法としては不完全)
分娩の方法としては子宮破裂の危険性が赤い場合は、帝王切開の選択が必要となる。
 2. 子宮全摘出手術 <子宮をすべて取り去る>
  対象者: 妊娠、出産を終えた女性
  問題点: 特になし(再発することがない、完全な根治療法)
  種 類 : 腹式全摘手術・・・ 開腹して筋腫を切除
         腟式全摘手術・・・ 腟から子宮を引き出して摘出するが、子宮の大きさ、癒着の有無、分娩の既往などで術式を決定する
        腹腔鏡下手術・・・ 腹腔鏡下子宮全摘出術、膣式子宮全摘出術の補助として使用するが、技術の熟練が必要
 3. 子宮動脈塞栓術 
  対象者  妊娠を希望する女性
方法  大腿動脈よりカテーテルを挿入し、子宮動脈を塞栓により閉塞させ筋腫の縮小、症状の改善を行う。諸報告によれば過多月経、腹部膨満感の症状に対しては平均87%に有効で、縮小率は57%と報告されている。
  問題点 透視による被爆、術後の感染からの死亡の報告もあり、安全性は確立されていない。保険の適応はまだ認められていない。
 4. 集束超音波治療(FUS)
ほとんど無侵襲で(傷が残らない)日帰りでの治療が可能である。自覚症状の改善が見込まれるが、FUSでの治療の経験が殆どなく、症状の改善率、病変部の縮小、再発といった事に関するデータがない。
     
B) 子宮腺筋症 
     

子宮内膜類似の組織が子宮体部筋層に存在するものを子宮腺筋症という。
子宮内膜症は子宮内膜組織に類似する組織が子宮内腔または子宮筋層以外の部位で発生、発育するもので、子宮腺筋症とは区別されている。病理額的には識別は困難だが、病因、病態、臨床像、治療法から別個に扱われている。子宮腺筋症と子宮内膜症(チョコレートのう胞)と合併は高頻度に認められ、不妊症の原因となる。
子宮腺筋症と子宮筋腫は、発生原因はまったく異なるものの、症状として現れるもの、他覚的所見や検査所見、治療法という面ではほとんど同じで、しかも両者は良く合併することから、あまりきちんとした区別をなされないまま治療がなされているのが現状です。
     
 
症状
過多月経、月経困難症、貧血などの自覚症状は子宮腺筋症のほうが筋腫よりも強いことも特徴です。
不妊症に関しても子宮内膜症の合併が多いため、子宮筋腫より頻度は高い。
妊娠や更年期で生理がなくなると、症状は軽快します。
     
 
治療  子宮筋腫とほぼ同様な治療(対照療法、ホルモン療法、手術療法)が行われている。
     
 ホルモン療法
子宮腺筋症の組織はホルモン療法の効果が低いので、外性子宮内膜症ほどホルモン療法の効果は期待できない。子宮腺筋症に対するホルモン療法は症状の軽減や、手術前に貧血の改善あるいは手術療法が困難な場合に使用される。
手術療法
子宮温存を希望する場合、子宮筋腫のように核出術は容易ではない。腫瘤形成型の場合は、部分摘出は可能だが完全摘出、症状の改善は期待できない。
標準術式としては子宮全摘出が行われる。膣式手術は癒着の有無、腫瘤の大きさにより制限されるが、症例により腹腔鏡補助下の膣式手術も可能である。
     
  
 子宮筋腫と子宮腺筋症の鑑別診断

     
1. 双合診: 子宮は硬く子宮内膜症の合併があると癒着などのため、可動性が制限される
2.超音波診断: 子宮腫大しているが、腺筋症部分は高輝度に写り子宮筋腫のように境界が鮮明でない。
3..MRI: 子宮筋腫はT2強調画像で境界明瞭な腫瘤として認められるが、子宮内膜に連続する境界不明瞭な像として認められる。子宮筋層にビマン性に広がるものと腫瘤形成型のものがあり、筋層内に異所性子宮内膜組織や出血を示す点状の高信号が多発することがある。高信号部分が多いほど月経痛が強いと推測される。 
   
 
     
   
 
   
 子宮筋腫と子宮腺筋症の診断と治療は変化してきている。治療法は対症療法による経過観察から手術療法、薬物療法、動脈塞栓術など多数の選択肢があるが、悪性疾患の除外する確定診断を行い最善の治療を選択すべきである
     


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