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 今月は単純ヘルペス感染症についてお話ししてきましたが、中でもヘルペス脳炎は非常に重篤な疾患です。ヘルペス脳炎はわが国では年間に100~200例くらい発生していると言われます。発病年齢によって症状には大きな違いがあるとされますが、一般に直前まで元気だった子どもが急に発病し、生命の危険性を伴い、治っても神経学的な後遺症を残す可能性の高い疾患であるとされます。

 子どもにとって高熱にともなう熱性けいれんは珍しい症状ではありません。しかし熱性けいれんの多くは一度発作が止まると意識を回復してほとんどの場合は同じ日にけいれんを繰り返すことはありません。けいれん発作が治療に抵抗して持続する時や一度止まっても何度も繰り返し発生する時、けいれんが止まっても意識障害が続く時などには脳炎・脳症を考えておかなければなりません。脳炎は中枢神経感染症で適切な治療を行わなければ死亡する確率が高く、治っても神経学的後遺症を残すことが多い疾患です。中でもヘルペス脳炎は治療の開始時期がその経過に大きな影響を及ぼすことが知られており早期発見、早期治療が大切です。

 ヘルペス脳炎と他の原因による脳炎を区別できるような特別な症状はありませんが、感染症として高熱、髄膜刺激症状として頭痛や嘔吐、脳症状として意識障害やけいれん、侵された部位による脳症状が見られます。歯肉口内炎は10%くらいに見られるだけです。ヘルペスウイルスは脳の中でも側頭葉や前頭葉を好んで侵すのでCTやMRIなど画像検査も診断のためには重要です。ヘルペス脳炎を疑った場合には髄液中のウイルス検査を行った後に抗ウイルス薬を投与します。

 単純ヘルペスは珍しいウイルスではありません。乳児の初感染では歯肉口内炎が多く見られますが、その90%は不顕性感染であるとされ、抗体保有率は3歳児で20%、成人でも50%程度であるとされます。しかし新生児ヘルペスのように母子感染の重要な原因ウイルスであるとともに、ヘルペス脳炎など致命的でありまた神経系後遺症が残る可能性が高い重要なウイルスです。

2005年2月22日掲載

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