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 原因不明の乳幼児突然死症候群(SIDS)について、従来は東洋人よりも欧米人に多い疾患とされていました。これはその後の調査で人種による遺伝的な要因よりも、育児環境が最も大きく関与していることが明らかにされました。特にアメリカでは子どもを乳児期から一人で夫婦と別の部屋に寝かせることや、うつ伏せに寝かせる習慣があります。これらの習慣がSIDS発生の危険性を増大させていたのだと考えられます。

 平成10年に旧厚生省はSIDS発生の危険因子として、うつ伏せ寝は仰向け寝の3倍、人工栄養法は母乳栄養法の約5倍、両親の習慣性喫煙は非喫煙の約5倍、発生頻度が高いことを示しました。うつ伏せ寝とSIDSの関連については顔が見えにくい、柔らかい寝具で鼻が圧迫されることなどが考えられていますが、仰向け寝よりうつ伏せの方がよく眠る傾向があり覚醒反応が起こり難いのではないかと考えられています。母乳栄養児については、感染症に対する抵抗力の違いや、口腔の発達が異なることが考えられています。タバコについては、妊娠中の直接・間接の喫煙によりなんらかの有害物質が児の呼吸中枢に作用している可能性が考えられています。

 その他、育児環境として従来の日本のように添い寝や親子で川の字に寝る場合には、常に子どもは親の傍で寝ており、子ども部屋で子ども一人寝かせる場合よりもSIDS発生の頻度は低くなります。

 SIDSで子どもを失った母親は子どもの突然の死に精神的なショックを受けるとともに自分の過失ではないかとの自責の念に駆られることが多く、さらにSIDSが周囲に十分理解されていないために非難の目で見られることがあります。この上に警察や医療従事者から様々な質問を受けることとなります。SIDSという正確な診断を下すためには解剖することも必要となります。このような母親に対する精神的なサポートが必要なことは言うまでもありません。

2003年1月28日掲載

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