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【答え】 QT延長症候群 -不整脈専門医を受診-

田岡病院 森 博愛(徳島市東山手町1丁目)

 「QT拡張症候群」と言われたとのことですが、おそらく「QT延長症候群」の勘違いと思います。質問者の年齢、性別、主な訴え、自覚症状の有無などが分からないので、QT延長症候群についての一般的な事項について説明します。

 QT延長症候群とは、心電図のQT間隔が延長する疾患=図参照=です。つまり、心臓が収縮して拡張するまでの時間が長くなる症状です。QT間隔が長くなると心臓が過敏になり、生命をおびやかす重い不整脈発作が起こりやすくなる重要な病気です。

 QT延長症候群には、先天性と後天性があります。先天性QT延長症候群は生まれつきQT間隔が長い状態で、心臓の筋肉の興奮性に関する遺伝子に異常がある人に起こります。一方、後天性QT延長症候群には遺伝子異常がなく、不整脈や精神病の治療薬などさまざまな薬剤を内服している人や、カリウムやマグネシウム不足など電解質異常を持つている人などに起こります。

 先天性・後天性のいずれも症状は失神、急死で、その原因は、心室頻拍(ひんはく)、心室細動などの悪性不整脈の出現です。後天性の場合は薬剤の内服などの原因があるので、それを取り除くと症状はよくなります。

 先天性QT延長症候群には心電図のQT間隔延長に加え、生まれつきの聴覚障害(先天性聾(ろう))を合併する場合があります。相談者は耳鳴りがあるとのことですが、耳鳴りだけであればQT延長症候群とは無関係ですが、念のため耳鼻科で聴力障害(内耳性難聴)の有無について検査をしてもらってください。

 単に心電図のQT間隔が延長しているだけでは、QT延長症候群と診断できません。失神発作、心室頻拍・心室細動などの悪性不整脈、先天性聾、急死の家族歴の有無などを総合して先天性QT延長症候群であるかどうかを診断します。

 こうして先天性QT延長症候群であることが明らかになれば、危険な状態にあるかどうかを評価して、危険性が低い場合には薬剤療法、危険性が高い場合には除細動器を体内に植え込んで治療することなどが必要になります。

 従って質問者にはまずQT延長症候群であるかどうか、もしQT延長症候群であれば先天性、後天性のいずれか、先天性ならどのような型の遺伝子異常があるか、また現在危険な状態にあるかどうかなどについて、詳しい専門的な診断を受けることが必要です。徳島大学循環器内科、徳島赤十字病院循環器内科など不整脈専門医がいる病院を受診して精密検査を受けることをお勧めします。

徳島新聞2008年1月27日号より転載

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