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あけましておめでとうございます。皆様におかれましては、健やかに新年を迎えられましたこととお慶び申し上げます。より良い徳島の医療、日本の医療を求め、守り抜くべきものは守り、変えるべきものは変え、人が人として大切にされる社会の実現を目指すことを胸に刻み活動してまいります。皆様のご理解とご支援の程をお願いして、年頭のご挨拶とさせていただきます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。徳島県医師会会長 齋藤義郎

【回答】 肝嚢胞 -超音波検査で経過観察-

香川内科院長 香川博幸(板野郡藍住町住吉)

 肝硬変症などでおなかに水がたまる腹水や、鬱血(うっけつ)性心不全のときに見られる鬱血肝などは、早急の治療が必要であり、今回の例とは異なるものと思われます。

 ご質問の文面から、肝嚢胞(かんのうほう)症の診断を受けたものと考えられます。肝嚢胞は、肝臓内に袋状に水がたまる良性の腫瘤(しゅりゅう)です。一般に自覚症状が少なく、偶然に、または健診などで発見されることが多いようです。腹部超音波検査の普及により、発見の頻度は増加しています。また、40歳以上の中高年層が80%と大部分を占め、性別では女性が多いとされています。

 袋状腫瘤は、肝臓のどの部位にも発生しますが、肝右葉(肝臓の右側)に多く、円や楕円(だえん)の形をしています。発育は極めて緩慢で、通常は被膜に囲まれて限局していますが、時に、非常に大きくなることがあります。内容液は無色透明から茶褐色までさまざまです。

 嚢胞は、外傷性や腫瘍性などを除いては先天的なもので、その数によって孤立性嚢胞と多発性嚢胞に分類されます。多発性肝嚢胞の場合、腎嚢胞の合併が30~50%と高率で見られ、そのほかにも、膵・肺・脾などに嚢胞の合併をみることがあります。

 先にも述べたように、通常は自覚症状が乏しく、偶然あるいは健診で見つかることが多いのですが、部位や大きさによっては、腹部膨満感や上腹部の鈍痛などを訴えることがあります。

 一般の血液検査では、ほとんどの症例で正常範囲のことが多く、肝機能異常がみられるときには、脂肪肝などほかの合併疾患を調べる必要があります。また、腎嚢胞合併例では腎機能検査も必要です。

 診断は、画像診断、特に腹部超音波検査が非常に有用です。辺縁平滑な円形の腫瘤で、内部は無エコーで後方エコーの増強など独特の所見があり、診断はそう難しくありません。

 肝臓に嚢胞状変化を来して鑑別を要する疾患としては、肝膿瘍(かんのうよう)、嚢胞性腺がん、胆管拡張症などが挙げられ、多くは、症状や血液検査を組み合わせると鑑別可能ですが、さらなる検査として、腹部CTスキャン、MRI検査や胆管造影、また、試験穿刺(せんし)をして内容物を調べることもあります。

 治療は、孤立性であっても多発性であっても、無症状である場合は放置することが多いと思います。まれに、大きさや発生部位によって圧迫症状が強いとき、嚢胞内部での出血、感染などの合併がある場合は、治療の対象となることがあります。

 治療としては、超音波下の穿刺排液で寛解が期待できますが、嚢胞液の再貯留といった再発がよくみられるなど問題も多く、再発予防の目的で、穿刺排液後にエタノールの注入が試みられることがあります。また、嚢胞壁切除術など外科的治療を行うこともあり、最近では、腹腔鏡を用いる体への負担が少ない手術法も進歩しています。

 しかし、肝嚢胞は一般には予後良好であり、肝嚢胞の診断が確定された場合、心配することなく経過観察のみで、生活も普段通りしてよいと思われます。できれば1年に1~2度くらいは腹部超音波検査を受けられ、嚢胞に変化がないか、大きくなっていないかなどの確認をしてください。

徳島新聞2011年1月30日号より転載

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