徳島県医師会 トップページへ

  • 文字サイズ標準
  • 文字サイズ拡大
文字サイズ変更について
健康経営優良法人2023の認定を受けました。
ホール・研修室、ご利用いただけます!新会館ホール・研修室等をレンタルいただけるようになりました。詳しくはお気軽にお問い合わせください。
オンライン資格確認導入について
「医師資格証」について

【答え】 アキレス腱(周囲)炎 -まずはスポーツを中断-

加藤整形 院長 加藤 憲治(徳島市仲之町3丁目)

 アキレス腱とは、ふくらはぎにある筋群が収束して1本のすじになったもので、かかとの骨に付着します。つま先立ち動作などで関節を動かすときに、筋肉の力を骨に伝える役割をします。本来、ほかの腱と比べると、太くて丈夫なものですが、逆にそのことは、人間の動作そのものが、常にアキレス腱に強い力をかけていることを示しています。

 質問の内容から、診断はアキレス腱炎、あるいはアキレス腱周囲炎が考えられます。この2つは明確に区別しにくいものですが「ぎしぎしときしむ」との表現ですので、腱そのものの損傷や炎症よりも、腱周囲の膜などに炎症を起こし、うまく腱が滑動していない状態と推察しました。

 直接の原因は、急にスポーツを始めたことで、普段の生活では生じない強い負荷が、アキレス腱部にかかったためでしょう。ただし、10年前にも同様の痛みがあったとのことなので、炎症を起こしやすい基礎的な原因も考慮する必要があるかもしれません。

 アキレス腱部の障害を起こしやすい身体的特徴として、下肢の筋柔軟性低下や配列異常(回内足など)が挙げられます。特にスポーツに関連して起こる症状であれば、動的アライメント(動きの中での足部の傾き)が関係している場合があります。

 例えば、ランニング時などに足が地面に着いたときと離れるときで、足部の傾きが大きく変化すれば、アキレス腱がねじれながら、むちのようにしなることになります〈図〉。これが繰り返されると、アキレス腱やその周囲に、機械的な刺激によって炎症を引き起こすことになります。

 そのほか、痛みの部位がかかとの骨に近い腱付着部に生じているのであれば、スポーツによる負荷だけでなく、生まれ持ったかかとの骨の形状や、シューズの圧迫などが原因となっていることもあります。この場合は、アキレス腱付着部滑液包炎として区別しています。

 いずれにしても、急性で痛みが強ければ、まずスポーツを中断して、患部の安静を優先させてください。この際、歩行時は1センチくらいの厚みをもたせたパッド(ヒールカップとしてスポーツ店で市販されています)をかかとの下に敷き込み、ローヒールの靴を履くような感覚にすると、意外と楽です。

 もちろん、湿布なども使用すればいいと思います。頑固な症状のときは、内服薬や注射剤を使うこともありますが、通常はこのような処置で痛みは改善してきます。

 問題は、痛みが再発せずスポーツ復帰を果たせるかということでしょう。歩行や日常動作での痛みがなくなれば、スポーツを始めていくこととなります。大事なことは、焦って急に強い負荷をかけないで、一つ一つメニューを増やし、痛みや違和感がないかを確認しながら進めることです。

 例えば、ウオーキング、ジョギング、ランニング、ステップ、ジャンプなど軽負荷から強負荷へ、また短時間から長時間へ徐々に移行させます。休養も最初は多く取るなど、すべて少しずつ増やすことが原則です。

 できるだけ早期のスポーツ復帰を望まれる方は、炎症軽減を目的とした医療器機での治療、正しいストレッチ、ヒールカップやテーピングの使用、あるいは下肢配列異常があればインソール(靴の中敷き)での調整などスポーツリハビリテーションの技術を治療当初から取り入れると、よりスムーズにトレーニングが進むと思います。整形外科医に相談してみてください。

徳島新聞2004年11月14日号より転載

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.