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【答え】 赤血球増加症 -肥満も一つの要因運動を-

徳島県赤十字血液センター 所長 小阪 昌明

 多血症とは、最近では赤血球増加症と呼ばれるようになっています。男性では血液1マイクロリットル中に赤血球数600万以上(女性は550万以上)、1デシリットル中のヘモグロビン濃度18グラム以上(同16グラム以上)、ヘマトクリット値55%以上(同50%以上)に増加している場合を言います。

 女性は男性に比べて赤血球数は少ない傾向にあるので、560万というと少し多い目であることに違いはないようですね。赤血球増加症は、軽度の場合には一般に症状がなく、ご質問の女性のように検診など、血液検査をする機会に偶然見つかることが多いようです。

 赤血球増加が高度になってくると、血液の粘度の増加による循環障害のため頭痛や目まい、視力障害、耳鳴り、けん怠感、知覚異常、呼吸困難などの症状がみられるようになります。問題なのは脳、心臓、肺、腹部、下肢の動脈、静脈、微小血管など、全身のいずれの血管にも血栓症が生じうることで、ときには皮膚や粘膜の出血症状を伴うこともあります。

 赤血球増加症は大きく2つに分類され、真性赤血球増加症と二次性赤血球増加症があります。真性赤血球増加症は、細胞内の情報伝達に働いているJAK2チロシンキナーゼの遺伝子異常によって起こってくる腫瘍性疾患であることが最近、明らかにされています。

 この場合には赤血球数の増加のみではなく、白血球や血小板の増加もあります。これに伴って皮膚掻痒(そうよう)感、高血圧、出血などに加えて、肝・脾(ひ)腫による腹部膨満感があったりします。

 二次性のものは高地滞在、心臓病、肺疾患、肺胞換気障害、喫煙、ヘモグロビン異常などによって血液の酸素分圧が低下し、腎臓から産生される造血ホルモンの血中エリスロポエチン濃度が高くなり、たくさんの赤血球が骨髄で産生されることによるものです。

 エリスロポエチンを産生する腎がん、肝がん、小脳血管腫などもあります。常染色体優性遺伝する家族性赤血球増加症も、ごくまれに報告されています。

 ご質問の女性は太り気味のようで、肥満指数〔体重(キロ) ÷ 身長(メートル)の2乗〕を計算すると28.4になり、25以上なので明らかに肥満であると考えられます。太っていると呼吸運動が抑制され、肥満性低換気症候群のため血液の酸素分圧が低下し、二次性の赤血球増加症に結び付くことになります。

 これはよく話題になっている睡眠時無呼吸症候群にもつながっており「長く寝ているのに、朝起きてなぜか疲れが取れていない」「いつも眠い」などの症状があります。ご質問の女性は肥満性低換気症候群による二次性赤血球増加症の可能性があります。

 体重を減少させるために、運動することはよいことです。赤血球を減らす食事はありませんが、体重を減らすときに極端な食事制限はしないで、バランスのとれた食事を規則正しくすることが大切です。

 生活上注意すべきことは、特に外で仕事をする場合は、水分の摂取を十分に行って脱水症にならないことです。また、風邪などのときに処方される非ステロイド性消炎剤は出血のリスクを高める可能性があるので、できるだけ避けた方がよいでしょう。

徳島新聞2006年8月13日号より転載

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