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【質問】 過食気味で体重増える一方

 20代後半の女性です。仕事を始めて以来、年々過食気味になり悩んでいます。体重は増える一方で自分でも嫌になるほどです。食べる量を減らし、運動量を増やせば改善できるということは分かっていても、自分では食欲をコントロールできません。慣れてしまった生活習慣を変えることは大変つらいです。肥満症治療について教えてください。

 

 

【答え】 肥満症 -自身の行動パターン修正を-

豊田内科(徳島市住吉2丁目) 豊田健二

 肥満とは、体に占める脂肪組織量の過剰蓄積状態をいい、肥満により内臓脂肪が蓄積することでメタボリック症候群を誘発します。その結果、高血圧症や糖尿病、脂質異常症などを発症したり、体重の増加で転倒などによる骨折のリスクが増加したりすることが分かっています。

 日本人の死因だけではなく、生活の質を落としている原因の代表的なものに脳血管障害や心疾患、認知症、大腿(だいたい)骨頸部骨折などが挙げられていますが、その原因となっているのはメタボリック症候群であり、さらに、そのメタボリック症候群を誘発している大きな原因の一つが肥満です。

 従って肥満を解消することで長生きができ、将来にわたって元気で暮らせる可能性が高いといえるわけです。

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 現在、最も多く用いられている肥満の判定方法は世界保健機関(WHO)で推奨されている「Body Mass Index(BMI)」です。BMI=体重(キロ)÷身長(メートル)÷身長(メートル)で計算し、判定します<表参照>。

 BMI22前後の人が最も病気にかかりにくいことが明らかになっているため、日本肥満学会では標準体重(健康体重)として「標準体重=身長(メートル)×身長(メートル)×22以下」の式を推薦しています。

 わが国において抗肥満薬は認可されておらず、肥満に対する治療は現在のところ食事療法と運動療法しかありません。

 食事療法のポイントは<1>サラダなど野菜から食べ始め、咀嚼(そしゃく)回数を多くし(1口15回以上)、最後の1口を残す<2>朝食は抜かず、朝早めに摂取して夕食は就寝3時間前に済ませる<3>食事パターンを改善する(早食い、ながら食い、まとめ食いの禁止)<4>食事場所を限定する(ソファやベッドなどで食べない)<5>買い物に行くときは事前にリストを作り、必ず食後に行く<6>食品は保存場所を1カ所に限定する<7>好物の食品は中身の見えない開けにくい容器に保存する<8>大皿盛りはやめて小分けして食べる<9>食事が終わったらすぐに食卓から離れ、残り物はすぐに捨てる-ことです。

 また、運動療法のポイントとしては<1>20~30分程度の大股速歩を行う<2>階段を利用し、1日1万歩以上を目標にする(歩数計を使用)<3>外出は徒歩か自転車で行い、できるだけ車の利用を控える-が挙げられます。

 肥満などに対する食事療法や運動療法は、継続し維持することで初めて効果が発揮されます。そのためには、単に食事を減らしたり運動したりするだけではなく、まず、肥満に至る過程において習慣化された自分自身の行動パターンを分析し、それを基に行動パターンを修正することがとても重要です。そうすることで、継続的な食事療法や運動療法が維持されるといわれており、これを行動修正療法と言います。

 実際には各個人の年齢や基礎疾患、仕事の内容、生活パターンなど、さまざまな背景によって食事療法や運動療法の内容は異なってきます。必要に応じて最寄りのかかりつけ医とよく相談をしながら実施していただきたいと思います。

徳島新聞2012年9月16日号より転載

 

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