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【質問】 腰の痛みが治まらない

 60代の女性です。ぎっくり腰で接骨院に行き、翌月、整形外科でレントゲンを撮った結果、以前に圧迫骨折した形跡があるとのことでした。痛み止め薬と湿布で様子を見ましたが、痛みが治りません。その後、MRIを撮影しましたが悪い病気はないとのことで、神経に触れて痛くなれば大手術が必要とも説明されました。骨粗しょう症の薬を飲んでいますが改善しません。おへその裏の辺りが痛みますが、装具は胸部などを圧迫するのでやめました。寝たきりになるのが怖いので、緩和する方法はないでしょうか。



【答え】 脊椎圧迫骨折と後遺障害 -骨粗しょう症 治療法相談を-

橘整形外科 橘 敬(徳島市寺島本町西2丁目)

 脊椎圧迫骨折は、骨粗しょう症を合併する高齢者に多く、特に、骨粗しょう症の強い方は、くしゃみをしたり腰をひねったりしただけでも骨折を起こす場合があります。骨折は胸椎と腰椎の移行部で起こりやすく、変形が強いと極端に背中が丸くなります。

 診断は、問診、触診、レントゲン撮影により行います。はっきりしない場合は、CT検査やMRI検査を行って診断する場合もあります。

 治療は通常、保存的加療が行われます。ギプスやコルセットを装着し、できるだけ背中が丸くならないように固定します。また、食事や排尿排便、入浴といった日常生活の動作の安静度については、骨折の程度や全身の状態によって、主治医が指示することになります。

 動作時の激しい痛みは、通常1カ月ほど続く場合が多く、症状に合わせて痛み止めなどを使用します。激しい痛みが改善してくると、リハビリテーションを開始します。リハビリテーションの方法は、腹筋・背筋をはじめとするストレッチや筋力トレーニングです。

 脊椎圧迫骨折の後遺症としては、椎体の変形や骨癒合不全、椎体がつぶれて脊髄圧迫することによる神経まひなどが起こる場合があります。これらの後遺症に対して人工骨を注入する方法や、手術による脊椎固定術や脊髄神経除圧固定術といった方法が採用される場合があります。

 しかし、いずれの方法も長所と短所があるため、慎重に適応を考えなければならないと思います。

 ご質問の女性は、脊椎圧迫骨折による後遺障害で悩まれているようです。MRI検査で神経圧迫の所見はなく、下肢の神経痛や運動まひは起こっていないようですので、椎体の変形による円背や骨癒合不全による疼痛(とうつう)の可能性が高いと思います。

 いずれも、骨折を起こしたことによる後遺症としては頻度が高く、完全には治りにくい症状ですが、今回の骨折が原因で寝たきりになってしまうということは考えにくいと思います。

 ただ、寝たきりになる原因は<1>脳血管疾患<2>老衰<3>骨折転倒-の順となっていますので、今後の骨折転倒を予防することは、寝たきりにならないために大変有効な手段と思います。

 実際には、骨折予防のための骨粗しょう症の治療と、転倒予防のための運動器症候群の改善について検討することをお勧めします。かかりつけの整形外科医にご相談ください。

<運動器症候群(ロコモティブシンドローム)> 骨、関節、筋肉などの運動器の障害のために、暮らしの中の自立度が低下し、要介護になっていたり、要介護になる危険性が高かったりする状態。

徳島新聞2012年5月13日号より転載

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