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【質問】 鼻水が喉に流れ出る

 70代の女性です。鼻水が喉に流れてくる「後鼻漏(こうびろう)」に悩んでいます。病院では、薬はなく鼻を洗う以外に方法がないと言われました。毎日、朝晩に塩水で洗っていますが改善しません。喉に粘液が張り付き、それをせきで出すため喉も痛めます。あめをなめてごまかしていますが、治療方法はありませんか。日常生活で症状の改善方法があれば教えてください。



【回答】 後鼻漏 -薬物、局所療法、手術で治療-

庄野耳鼻咽喉科医院 院長 庄野 勉(小松島市大林町高橋)

 ご質問の「鼻水が喉に流れる」状態は、専門的にはおっしゃる通り「後鼻漏」といいます。もともと鼻や副鼻腔から産生される鼻汁の量は、1日2リットルとも4リットルともいわれます。これが喉に流れるのは生理的な後鼻漏で、通常なら違和感を感じません。違和感を感じるのは量が多いか、その性状が粘り気が多くて、いつもと違う病的な後鼻漏になっているからです。

 そのようになる原因には以下のことが考えられます。鼻水が喉に落ちるわけですから、ほとんどは鼻水が出る鼻の病気で、▽風邪症候群▽慢性副鼻腔炎(ちくのう)▽アレルギー性鼻炎▽血管運動性鼻炎(鼻粘膜の自律神経が温度差などに過敏に反応して生ずる鼻炎)▽萎縮性鼻炎(鼻の粘膜が薄くなっていく鼻炎で、鼻の中にかさぶたのようなものができる)▽鼻の中の腫瘍-などです。

 このほか、上咽頭(鼻の突き当たり)の炎症によっても同じような症状が起きることがあったり、咽喉頭(いんこうとう)異常感症といって、実際には後鼻漏がないのに後鼻漏があるような感じだけがずっと続いたりする病気もあります。

 問診では、後鼻漏が▽さらさらしたものか▽ねばねばしたものか▽膿(のう)っぽいか▽血が混ざっているか-などをお聞きします。検査では、前鼻鏡検査の後、ファイバースコープで鼻の中から喉や喉の奥まで十分に観察します。そして、副鼻腔炎が疑われるとレントゲンやCT、MRI検査といった画像診断をします。

 ご質問の方の後鼻漏は、実際にねばねばしたものが慢性的に喉の奥にくっつくようですので、器質的な病気が考えられます。頻度として最も多いのは、前述の慢性副鼻腔炎で、治療の目的は基本的に、粘膜の腫れを取って鼻汁を外に出し、本来の鼻粘膜の正常機能を回復させることです。それには薬物療法、局所療法、手術療法の三つの方法があります。

 薬物療法は、消炎酵素薬や粘液溶解薬、抗炎症薬、抗アレルギー薬などを使います。特に、マクロライド系抗生剤を少量長期投与します。

 局所療法は、鼻の中に薬剤を噴霧したり、ネブライザーで薬剤を吸入したりして、炎症を抑える方法です。

 手術療法は、中高度な副鼻腔炎が対象になることがあります。

 また、咽頭や喉頭にいつも鼻汁が流れることによって、2次的な炎症(慢性咽喉頭炎)が起きるので、この治療も大切です。

 鼻洗浄は、温度や塩分濃度を考えずに安易に行うと、鼻粘膜の繊毛や粘膜面の機能を損ないやすく、中耳炎を起こすこともあるため、頻繁に行うのもよくないと思います。

 いずれにしても、専門の先生と相談しながら諦めずに、根気よく治療されることが必要かと思います。

徳島新聞2012年3月11日号より転載

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