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【質問】 乳房にしこりと痛み

 40代の女性です。乳房にしこりができて、痛みもあったので病院に行くと、乳腺症と診断されました。どのような治療法があり、また、再発はしないのでしょうか。がん化する心配はありませんか。



【答え】 乳腺症 -定期検診による経過観察を-

近藤内科病院 乳腺甲状腺科 三木仁司(徳島市西新浜町1丁目)

 乳房にしこりを見つけると、誰でも「ひょっとしたら乳がんかもしれない」と、心配されることと思います。乳腺症と乳がんとの違いなどについてお答えします。

 妊娠・授乳中の乳房の変化は皆さんもご存じと思います。乳腺組織は女性ホルモンの影響で肥大・増殖します。月経開始前に乳房が大きく硬くなり、時に痛みを伴うのはこのためです。この変化が一部強く表れた状態が乳腺症です。最近では、病気ではなく、生理的変化の一環とみなすべき状態ではないかと考えられるようになってきています。

 乳腺症の症状は、両側、またはどちらかの乳房のしこりや痛みが代表的です。乳腺症のしこりも女性ホルモンの影響を受けるため、月経前にしこりや痛みが出現し、月経後にしこりが小さくなったり、痛みが軽くなったりします。

 一方、乳がんのほとんどのしこりは石のように硬くて、月経とは無関係に大きくなり、また、痛みを伴わない点で大きく異なっています。乳腺症では、授乳中ではないのに乳頭から分泌が見られることもあります。ほとんどは透明や乳汁様の分泌ですが、まれに血性の乳頭分泌が見られることもあり、そのときは乳がんとの鑑別が重要になってきます。

 以上の乳腺症と乳がんの違いについては、表にしておきましたので参考にしてください。

 乳腺症は良性のものです。痛みも大半は軽度で一時的なものですので、一般的に治療の対象にならず、経過観察のみでいいと思います。どうしても痛みが強いときは、痛み止めや、女性ホルモンをブロックする薬を投与する方法もあります。

 しかし最近、私が勤務する病院では、これらの薬が必要になった方はいらっしゃいません。乳がんでないことをお伝えすると、皆さん安心されて、痛みなどはあまり気にならなくなるようです。また、閉経を迎えると自然に症状が軽快します。

 最後に、がん化についての質問にお答えします。結論から申し上げると、ほとんどの乳腺症は、悪化してがんになるという心配はありません。乳腺症のうち、細胞異型を伴って増殖するタイプは乳がんの発生リスクが高いことが報告されていますが、そのようなタイプはまれであると考えられています。

 それよりも一番の問題点は、乳腺症によるしこりがある場合、その乳房にがんができても触診では早期に見つけにくい点です。そのためにも大切なのは、各市町村が実施しているマンモグラフィー検診を、必ず2年に1回は受けることです。

 また、日ごろから毎月、自己検診をして自分の乳房の状態を知っておくことも重要です。もし自分の乳房に気になることが見つかれば、すぐに専門医を受診するようにしてください。乳がんは早期発見すれば治癒できる病気であることを、ぜひ知っておいてください。

乳腺症と乳がんの違い
乳腺症乳がん
好発年齢30~40代40代以上
しこりの状態硬さゴムのような硬さ石のように硬い
動き動くことが多い動きにくい
境界分かりにくい分かりにくい
大きさの変化月経前に増大し月経後に縮小徐々に増大
痛み月経前に痛くなり月経後に軽快痛くない

徳島新聞2012年2月26日号より転載

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