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【質問】 脇腹に発疹ができ痛い

 70代の男性です。脇腹のあたりに帯状の赤い発疹ができました。病院に行くと「帯状ヘルペス」と言われ、内服薬と塗り薬で治療しています。とても痛いのですが治療期間は長くかかるのでしょうか。



【答え】 帯状ヘルペス -早期治療で長期化防止-

知恵島皮膚科診療所 所長 原田勝博(吉野川市鴨島町知恵島)

 質問の内容から推察すると「長くかかる可能性があるかもしれません」という曖昧な答えになります。帯状ヘルペス(帯状疱疹(ほうしん))の痛みが長く続くかどうかには個人差があり「50歳以上で糖尿病などの持病があり、発病初期の発疹や痛みの程度が強い方」は要注意といわれています。当てはまっているでしょうか?

 この痛みを考える際、病気を理解しておくことが非常に重要です。帯状ヘルペスは、ヒトヘルペスウイルスによって引き起こされる病気です。疲れると、唇にプツプツ出てくる口唇ヘルペスもヒトヘルペスウイルス属の仲間で、よく混同されますが、帯状ヘルペスとは別物です。

 意外かもしれませんが、水ぼうそう(水痘)と帯状ヘルペスは同一のウイルスで生じます。水ぼうそうにかかると、そのウイルスは感覚の神経に潜みます。病気や疲労などで体の抵抗力が落ちると、神経を伝って増殖し、皮膚に水ぶくれを作ります。

 神経は背骨を境にして左右に分かれているので、通常、帯状ヘルペスは左右どちらかの区切られたエリアにしか出ません。胴では、その発疹が名前の通り帯のように出てきます。感覚の神経で炎症を起こすため、痛みやしびれ、かゆみが生じます。

 痛みの程度は、年齢や健康状態などによって異なります。ちなみに、私は12歳のときに発症しましたが、全く痛くありませんでした。

 帯状ヘルペスには3つの痛みがあり▽ウイルスの増殖による炎症からの痛み▽炎症で神経が壊されて生じる神経痛▽それらの強い痛みの記憶が、何かにつけて呼び起こされてしまう心からの痛み-が知られています。

 これらの痛みを少しでも残さないようにするには、初期治療が大切です。現在の医学では、残念ながら薬でウイルスを退治することはできませんが、その増殖は食い止められます。できるだけ初期に診断し、高価ではありますが抗ウイルス薬を早期に投与できれば、症状緩和と後遺症予防が期待できます。

 また、一緒に投与される消炎鎮痛薬やステロイド薬も急性期の炎症を抑えるには重要で、特に、早期の服薬は面倒でもきっちりされた方が得策です。

 質問者は、適切なお薬が処方されているにも関わらず、痛みが非常に強いことを考えると、早めにかかりつけ医を再診された方が良いでしょう。その状態に応じて、消炎鎮痛剤の変更・追加や抗うつ剤の追加、場合によっては、ペインクリニック(痛みの専門医)への紹介も考慮していただけると思います。

 欧米では発症や後遺症の予防のため、高齢者への帯状ヘルペスワクチン接種を行っています。日本でも望まれてはいますが、まだ認可されていません。現状では糖尿病など持病を持たないように健康保持に努めると、そのリスクが低くなるかもしれません。

 適切な治療を受けても強い痛みが残る場合もありますが、早期の適切な治療で、後遺症を引き起こす確率は減るはずです。

徳島新聞2011年9月4日号より転載

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