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【質問】 CTで肺に影見つかる

 50代の男性です。人間ドックで、肺に3~3.5ミリの影があると言われました。半年後に再受診してCT検査をしたのですが、小さすぎて何か分からず、半年~1年後に再度検査するようにと言われました。大きさは変わっていないそうですが、半年の間に悪くなって取り返しのつかないことにならないか心配です。親類にはがんにかかった人が多いのですが、がんも含めてどのような病気の可能性がありますか。もっと詳しく調べることはできないのでしょうか。検査は半年後で構わないのですか。



【答え】 肺の異常影 -大きさ不変なら経過観察-

木下病院 橋本吉弘(徳島市南末広町)

 人間ドッグで肺に影があると言われたら、誰でも「ひょっとしたら肺がんかもしれない」と思い、不安になることでしょう。ご質問にお答えするには、まず、胸部レントゲンやCTで異常な影が発見された場合にどのような病気が考えられ、どのように検査を進めていくか、という観点から説明すると分かりやすいと思います。

 ご質問のような、検診で見つかる肺の異常影は孤立結節影といい、大きくは、腫瘍性疾患と炎症性疾患に分けられます。数は後者の方がずっと多いです。腫瘍性疾患には、悪性(いわゆる肺がん)のものと、少数ですが良性のものがあります。炎症性疾患には、肺結核腫、非結核性抗酸菌症、肺真菌症、器質化肺炎、それに肺内リンパ節などがあります。

 次に、胸部異常影が見つかったときの検査の進め方について説明します。まず、CT、MRIなどの画像診断をして、異常影の大きさ、形などを調べます。肺がんが疑われた場合は診断を確実にするため、さらに検査を進めます。痰(たん)に含まれる細胞を調べたり、ごく細い胃カメラのような気管支鏡を気管の中に入れて異常影の中から細胞を取ったりします。

 これらの方法でも診断がつかない場合、CTを使って位置を決め、針を肺に刺し入れて細胞を取ったり、胸腔(きょうくう)鏡という道具を使って手術的に異常影を含む肺の一部を取ったりします。いずれも、がん細胞を直接確認して診断を確実にするためのものです。その他にも診断を補助するために、血液検査でがんに特徴的な腫瘍マーカーを調べたり、PET検査といって放射性物質を用いた検査を行ったりします。

 しかし、ここで重要なことは、CTで数ミリの異常影が見つかったとしても、小さすぎて、なかなかがん細胞を取り出して確認できないということです。もちろん、異常影を含めて手術的に肺を取り出して調べることは可能ですが、肺へのダメージも大きく、すべてこのようにすることは現実的ではありません。

 そこで一般的には、3カ月後、6カ月後、1年後などと時間をおいて再度CT検査を行い、異常影の形や大きさの変化を見ます。肺がんは普通、数年かけて徐々に大きくなってきますので、1週間とか1カ月でははっきりした変化が見られないからです。また、CT検査はX線被爆の問題もあり、頻回にできるわけではありません。

 ご質問のように、6カ月後に異常影が大きさも形も変化がなければ、おそらく古い炎症性疾患だと思われます。しかし、まれには長期間あまり形の変わらない肺がんもありますので、さらに経過観察が必要でしょう。この場合、6カ月後に再検査というのは妥当だと思います。

 「取り返しのつかないことにならないか」と心配されているようですが、前述のように医学検査にも限界があり、100%の確率で診断が下せないのが現実です。なお、数ミリの古い炎症性疾患は特に治療する必要はありません。

 最後になりましたが、セカンドオピニオンとして、大きな病院の呼吸器科の医師を紹介していただくのも一つの方法だと思います。

徳島新聞2011年2月6日号より転載

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