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【質問】 寝たきりで床ずれに

 80代の父親が数年前に脳梗塞による半身まひで寝たきりになりました。最近、腰の辺りに床ずれができています。床ずれが今後どうなるのかと、その治療法を教えてください。



【回答】 褥瘡(じょくそう)-2時間ごとに体位変換を-

田蒔病院 佐藤正毅(徳島市国府町和田)

 脳梗塞による寝たきりは、床ずれ(褥瘡)の基礎疾患として最も一般的なものです。ご質問の患者さんは、床ずれが最近できたようなので、程度は軽いと思われます。

 床ずれは、一定の場所に圧迫が長時間加わり続けることで発生する阻血性の潰瘍です。床ずれにより皮膚が壊死(えし)しますが、その範囲は「圧迫の強さ×持続時間」といわれています。よく発生するのは腰から臀(でん)部にかけてで、床ずれ全体の約70%を占めます。中でも大部分は仙骨部(骨突出部)です。そのほか、後頭部や肩、胸・腰部など骨の隆起している所に体圧がかかればできます。筋緊張などから思わぬ所にできることもあります。

 発生要因として、局所的には加齢による皮脂分泌や発汗の低下のため皮膚が乾燥しやすくなり、ベッドの背もたれを上下する際などに摩擦やずれが起こることが挙げられます。全身的には、低アルブミン血症による浮腫(ふしゅ)や皮膚弾力性の低下、低ヘモグロビンによる皮膚組織耐久性の低下が要因になります。また、加齢、基礎疾患、抗腫瘍(しゅよう)薬やステロイド剤の投与も発生要因になります。

 最も一般的に使用されている床ずれの分類は、患部の深さによって4ステージに分けるもので▽1=圧迫しても蒼白(そうはく)にならない紅班▽2=真皮に及ぶ損傷▽3=皮膚全層および皮下組織に至る深在性筋膜▽4=筋肉・骨支持組織に及ぶ損傷-に分かれます。

 床ずれの治療には、体位変換、栄養、局所療法が重要で、3つのうちどれが欠けても効果は上がりません。ステージごとの治療法を説明します。

 ステージ1は、発赤部分にポリウレタンフィルムを張るかワセリンを塗布し創部を保護します。1日1回は発赤部を観察します。

 2は、水泡形成の場合は水泡を保護するためポリウレタンフィルムを張って観察します。炎症のある場合はぬるま湯で洗浄し、創部の乾燥を防ぐため外用剤を使用します。消毒剤は創傷治癒を阻害するので原則的には使用しません。

 3・4は、黄色・黒色の壊死組織があるときは出血を考慮しながら早期に除去します。浸出液を伴うときはドレナージ(排液)します。ポケット(空間)が形成されてドレナージが困難なときはポケットを開放する必要があります。この場合は抗炎症作用のある外用剤を使用します。炎症が治まれば表皮形成を促進させる外用剤に切り替えます。

 創部は常に湿潤を保つことが重要です。ガーゼで創部を乾燥させるのは創傷治癒に逆行します。最も大切なことは、患者の状態を常に観察して外用剤を使い分け、体位や栄養状態に気をくばり、漫然と同じ治療を続けないことです。

 床ずれには予防が大切です。健康な体は、睡眠中でも15分おきに無意識に寝返りなどをするため、皮膚の血流が維持されて床ずれは発生しません。しかし、自力で体位変換できない患者は、介護者が定期的に体位変換しなくてはなりません。2時間ごとの体位変換が原則ですが、マットレスを適切に使用すれば延長も可能です。体位変換時に仙骨部に異常がないことを確認し、体位変換の時間を決めましょう。

 治療は、外用剤、被覆剤、マットレスなどをステージによって使い分ける必要があります。それでも改善が見られないときは、専門の皮膚科や形成外科の受診をお勧めします。

徳島新聞2010年9月19日号より転載

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