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【質問】 心筋・脳梗塞になったが

 70代の男性です。55歳のときに心筋梗塞になり、服薬で治りました。60歳で心臓血管内の3カ所にステントを入れました。同じ60歳で脳梗塞にもなり、血液の流れをよくする薬を服用しています。今後、どのようなことに注意して生活すればいいですか。



【答え】 動脈硬化症 -脂や糖分控え野菜多めに-

鈴木内科 副院長 鈴木直紀(吉野川市鴨島町)

 心筋梗塞や脳梗塞などは、動脈硬化症という同じ原因で生じる病気です。それぞれ心臓や脳の別の病気と考えず、動脈硬化症という一つの大きな病気としてとらえ、治療や予防をすることが大切です。

 動脈硬化症は加齢や脂質異常症、糖尿病、高血圧、喫煙、運動不足、肥満などが重なり、長い時間をかけて血管の壁に脂などが付着し、成長して生じると考えられます。進行すると、最終的には動脈の血流が遮断され、酸素や栄養が重要組織に到達できなくなり壊死(えし)してしまいます。この状態が発生する臓器に応じて、脳に生じれば脳梗塞、心臓なら心筋梗塞と言います。心臓の場合は、完全に血流が遮断されていない狭心症という状態もあります。

 これらの場合は、筒状の金属であるステントを動脈硬化の場所に置き、狭くなった血管を広げた状態に保つ治療があります。心臓が壊死する前に血流を再開させることができ、心筋梗塞を未然に防ぐことができます。

 ご相談の患者さんは、既に心筋梗塞、狭心症、脳梗塞などの治療を受けられているようですので、動脈硬化症としては進行した状態と考えられます。動脈硬化症は、脂質異常症や高血圧、糖尿病などの病気の数が多いほど進行が早くなることが分かっています。それぞれの病気について内科的治療や食事療法、運動療法などを適切に行うことで病気の数を減らし、進行を遅らせることができます。

 脳梗塞治療用の血液の流れをよくする薬は心筋梗塞の予防にも役立ち、血圧、血糖、コレステロールを下げる薬にも動脈硬化の進行を抑える効果があります。心臓と脳の両方によい効果が期待できますので、薬による治療を継続してください。

 食事は脂分(肉類、バター、揚げもの)や糖分(果物を含む)を控えめにし、野菜などを多めに取ってください。急に汗をたくさんかくようなきつい運動は、かえって血液を粘くして心臓や脳の血管を詰まりやすくします。水分を取りながら散歩などの軽い運動を1日30分程度、毎日続けることが大切です。

 今は安定した状態でも、年を取ると心筋梗塞や脳梗塞などが再発することがあるほか、心筋梗塞後に過激な運動を行うと心臓の状態が悪化することもあります。定期的に専門医の診断を受け、心臓や脳の病気に進行がないか、運動量や水分量に問題がないかを検査してもらうことも必要です。

 わが国では、高齢化や運動不足による糖尿病などの増加で、動脈硬化症を原因とする病気が増え、その予防は大変重要な課題となっています。健康診断などで、コレステロールや血圧、血糖に異常があれば早期から治療を行うとともに、運動の習慣をつけ、食事の内容やカロリーに気をつけるなど、日ごろから予防のために体調管理をすることが大切です。

徳島新聞2010年9月5日号より転載

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