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【質問】 目覚め悪く頭痛・疲労感じる

 20代の女性です。学生のころから血圧が低く、2年前に出産をしてからさらにひどくなり、最高血圧は常に90未満です。朝、目が覚めてから起きるまで30分以上かかり、頻繁に頭痛や疲労を感じます。高血圧を治す薬はありますが、低血圧は薬などで改善しますか?日常生活で気をつけることなどを教えてください。



【答え】 低血圧症-生活スタイルの改善重要-

徳島赤十字病院 循環器内科 高橋健文

 心臓は、ポンプのように縮んだり広がったりしながら、血管を通じて全身に血液を送り出しています。血圧とは、心臓から送り出された血液が血管の内側の壁を押す力のことです。心臓が縮んで血液を送り出したときの血圧を「収縮期血圧」、心臓が広がって体を巡っていた血液が心臓に戻ったときの血圧を「拡張期血圧」といいます。

 一般的に低血圧とは、収縮期血圧が100以下の場合を指します。血圧が低いこと自体は病気ではなく、低血圧によって治療を必要とする何らかの症状が現れると初めて「低血圧症」という病名がつきます。

 低血圧症の具体的な症状として、疲れやすい、朝起きられないなどの全身症状に加えて、めまい、ふらつき、頭痛などの脳循環障害の症状、動悸(どうき)、息切れなどの心臓の症状、食欲不振、吐き気、下痢、便秘などの消化器の症状、そのほか肩凝り、眼精疲労などが挙げられます。また、低血圧の人は繊細で過敏なことが多く、イライラやストレスに敏感といった症状をきたすこともあります。

 低血圧症は、原因不明の本態性低血圧症と、明らかな原因に基づく二次性低血圧症に分けられます。本態性低血圧症は若年女性に多く、予後も良好とされますが、まれに原因となる病気が隠れていることもあり、区別することが重要です。

 二次性低血圧症の原因としては、脳梗塞(のうこうそく)やパーキンソン病などの神経疾患、心血管疾患、糖尿病性神経障害、降圧薬や抗うつ薬などの薬剤性があります。この場合、原疾患の治療を行う薬剤を変更するなどして、低血圧の改善を図ります。

 相談者の場合は、本態性低血圧症の可能性が高いと思います。本態性低血圧症の場合、治療は基本的には生活の改善が中心となります。すなわち、規則正しい食事、十分な睡眠、十分な日差しを浴びること、適度の運動など、まずは現在の生活スタイルを見直すことが重要です。

 また、リラックスすることを心掛け、日の中でくつろぐ時間を設けましょう。相談者の場合は、朝起きるまでに30分以上かかるとのことですが、低血圧の人が朝が弱い理由は、血圧が低いからではなく、十分な睡眠を取れていないことが多いようです。寝る前にリラックス法などを取り入れて眠りやすい環境を整え、早く寝る習慣をつけるといいでしょう。

 食事面でもカフェインを取りすぎない、おなかいっぱいになるまで食べない、過剰な飲酒をしないといったことが眠りの改善になります。

 症状がひどく、日常生活に支障をきたすようであれば、薬物療法も行われることがあります。ただし薬物治療のみではあまり効果は期待できないことが多く、副作用も比較的多いので、あくまで生活改善の補助手段であるという認識が重要です。

 いずれにしても症状がひどい場合は、一度医師の診察を受けることをお勧めします。

徳島新聞2009年5月3日号より転載

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