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【質問】 処方された薬で便秘や脱毛

 30代の女性です。半年前から体の不調が続き、病院で「バセドウ病」と診断されました。薬を服用していますが、便秘や脱毛などが続き困っています。処方されている薬以外での治療は可能でしょうか。また、服用しながら妊娠はできますか。



【答え】 バセドウ病-別の内服薬に変更しては-

かわぶち耳鼻咽喉科 川淵 崇(徳島市八万町)

 気管の前方にある甲状腺では、新陳代謝を活発にする甲状腺ホルモンが作られています。バセドウ病は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される甲状腺機能亢進(こうしん)症の代表的な病気です。体は常にジョギングしているような状態になり、脈拍が速くなって疲れやすくなったり、微熱が続いたりといった症状が出ます。 亢進(こうしん)症の代表的な病気です。体は常にジョギングしているような状態になり、脈拍が速くなって疲れやすくなったり、微熱が続いたりといった症状が出ます。

 また、精神的にイライラして不眠になり、食欲があるのに体重が減少する人や、食べ過ぎて体重が増える人もいます。

 治療方法は、大きく分けて▽抗甲状腺剤の内服▽手術▽アイソトープ治療-の3つです。

 初めは、抗甲状腺剤を服用し、患者の状態や経過を診ます。抗甲状腺剤は、チアマゾールとプロピルチオウラシルの二種類です。副作用として白血球の減少などがあります。この場合、体の免疫機能が働かなくなって風邪などにかかりやすくなり、場合によっては致命的になることもあるため、のどの痛みや38度以上の高熱などの症状が出たら、服用を中止して主治医に相談してください。

 手術では、甲状腺を切除します。入院が必要で、首に傷跡が残りますが、短期間で治る治療方法です。甲状腺の手術に熟練した医師が手術すれば、合併症も少ないです。ただし、まれに再発することもあります。

 アイソトープ治療は、放射性ヨードを服用します。大変簡単で、効果も確実で安価な治療です。放射性ヨードのカプセルを1回内服するだけで、一応の治療は終了します。内服すると放射性ヨードが甲状腺に集まり、甲状腺の組織を破壊して甲状腺が小さくなり、甲状腺ホルモンを産生させる力が弱まります。

 欠点は、将来的に甲状腺機能低下症になる率が高く、不足した甲状腺ホルモンを甲状腺ホルモン剤で補わなければいけません。しかし、甲状腺機能低下症の治療に使う甲状腺ホルモン剤に副作用はありません。検査も年に1~2回でよく、抗甲状腺剤の治療よりはるかに楽です。

 ただし、放射線を使用するため、二次性の放射線障害を引き起こす可能性があるので、基本的に50歳以上の人が適応となります。

 妊娠についてですが、甲状腺機能亢進状態であれば、流産や早産の率が高くなります。抗甲状腺剤を服用し、甲状腺機能を正常化してから妊娠すれば問題はありません。抗甲状腺剤を正しく使用していれば、健常な妊婦と奇形の率は変わりません。

 授乳に関してですが、プロピルチオウラシルは母乳への移行が少なく、常用量であれば子どもの甲状腺機能には影響しません。チアマゾールは母乳中に移行しますが、使用量などによっては内服可能です。

 ご質問では、内服されている薬で副作用に悩まされているようですので、もう一つの内服薬に変更されてみてはいかがでしょう。ただし、薬は2種類しかありませんので、薬を変更しても副作用が続くようであれば、手術的治療も考慮に入れる必要があります。

 前述したように、甲状腺機能を正常に保っていれば、医師の指導のもと妊娠や授乳は可能です。甲状腺疾患専門の医師としっかりと相談され、治療を継続することをお勧めします。

徳島新聞2009年3月22日号より転載

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