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【質問】 一人でいられない65歳の妻

 65歳の妻のことです。最近、私が外出などをして家で一人になると、寂しさや不安でたまらなくなるというのです。感情の起伏も激しく、夜もあまり眠れていない様子です。何かあってはいけないと、娘や孫に来てもらうこともあります。年齢的な問題もあるのかもしれませんが、こうした症状は何かの病気なのでしょうか。教えてください。



【答え】 初老期の情緒不安 -何でも話せる関係つくって-

城西病院 精神科 勝瀬 烈(徳島市南矢三町)

 この年齢になると、自分の歩んだ人生は良かったのか、まだすべきことがあるのかなどを考え、人生の総決算を始めます。だんだんと体の衰えを感じ、身体的な不調を覚えたり、癌(がん)や生活習慣病などが気になったり、身近な人の死にショックを受けたりもします。 癌(がん)や生活習慣病などが気になったり、身近な人の死にショックを受けたりもします。

 特に女性は、子供が成人して夫婦二人の人生のステージに進もうしても、夫は会社人間のままで家庭を顧みずにほったらかしにされると、不満があふれてきます。

 この年齢の女性は、自律神経失調症といった更年期症状が終わり、女性ホルモンが低下しますが、同時に男性ホルモンが増えます。そのため、これまで我慢や遠慮をしてきたことが辛抱できなくなり、度を過ぎた不平を言うだけでなく、むしろ攻撃的にさえなってきます。

 質問にある奥さまが、若いころから感情の起伏が激しかった場合は、必要以上に不安がる不安性障害や、病気に逃げ込むヒステリーなどが考えられます。その場合は薬とカウンセリングが有効です。

 また、家庭環境の変化、定年退職、家庭の不和、経済問題、子供や孫の問題など、六十代の夫婦が抱えがちな問題が原因となっているケースもあります。この場合は、夫婦で信頼関係を築けるよう、できるだけ二人で行動し不安を和らげる努力をしてください。必要なら、病院にも付き添ってあげてください。

 あまり心配のいらない境遇なのに、必要以上に心配する場合には、うつ病などが考えられます。うつ病は最近多い病気で▽おっくうで何もできない▽今まで楽しんでいたことが楽しめない-といった症状があります。さらに、早朝覚醒(かくせい)などの不眠や肩凝り、頭痛などの身体的な症状も合併します。

 身体的な訴えが執ように続く場合は、心気神経症や仮面うつ病の可能性もあります。症状としては▽身体的な訴えが繰り返されるが異常は見つからない▽異常があっても程度とは不相応に訴える▽医学的な説明には容易に納得せず治療に抵抗する▽訴える部位があちこち移る-があります。

 最近になって人格が変化したというのなら初老期認知症も考えられます。同じことを何度も言うだけでなく、「知らない間に物がなくなった」「物を取られた」「知らない人が家にいる」といった訴えがあれば、認知症の始まりと考えられます。

 いずれの場合でも注意すべきことは、訴えを表面的にとらえず「救いを求める叫び」だという認識を持ち、二人の間に何でも話せる関係をつくることが大事です。

 質問だけではどの病気か判定しがたいので、一度神経内科や精神科を受診して相談されるのが良いと思われます。

徳島新聞2009年2月1日号より転載

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