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【質問】 健康診断で数値高く心配

 38歳の女性です。春の健康診断で、コレステロール値が高いとの結果が出て気になっています。診断では総コレステロール値が234もありました。ほかの項目は、HDLコレステロール93、LDL132、中性脂肪60、空腹時血糖値102、ヘモグロビンA1C 5.1で、そう高くないのですが、昨年の健康診断でも総コレステロール値は230に近い水準でした。ちなみに体形はやや太めです。このまま放置すると悪化するような気がするのですが、医者にかかったほうがいいのでしょうか。食生活や運動など生活上の注意点も含めて教えてください。



【答え】 総コレステロール異常 -定期的健診で経過みて-

阿南共栄病院 副院長 東 博之

脂質異常症の診断基準
(空腹時採血)
高LDLコレステロール血症
LDLコレステロール
140mg/dl以上
低HDLコレステロール血症HDLコレステロール
40mg/dl以上
高中性脂肪血症中性脂肪
150mg/dl以上
 昨年、日本動脈硬化学会から出された「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」では、総コレステロールが脂質異常症(高脂血症)の診断項目から除外され、現在は<1>LDLコレステロール<2>中性脂肪<3>HDLコレステロール-のいずれかが異常値を示した場合に脂質異常症と診断されています<表参照>。

 総コレステロールは、血液1デシリットル当たり220デシリットル未満が正常とされています。相談者の検査結果を拝見すると、悪玉コレステロールであるLDLコレステロールは132デシリットルと正常範囲であり、食事に強く影響を受ける中性脂肪も60デシリットルと正常です。

 ではなぜ、総コレステロールが異常に高い値を示したのでしょう。それは、善玉コレステロールであるHDLコレステロールが多いためと考えられます。総コレステロールは、LDLコレステロールと中性脂肪に含まれるコレステロール、そしてHDLコレステロールの三者の合計値で示されます。したがって、LDLや中性脂肪が正常でも、HDLが多い人は総コレステロールが高くなってしまいます。これが血液結果から判断される血中脂質の状況です。

 次に、HDLコレステロールについて考えてみます。善玉コレステロールと呼ばれているHDLコレステロールですが、これは動脈の壁に沈着したコレステロールを取り出して肝臓へ運ぶことで動脈硬化を抑制し、その結果、心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞が起こるのを抑える働きをします。HDLコレステロールが40デシリットル未満の人は、このような心筋梗塞や脳梗塞が起こりやすいというデータに基づいています。したがって、HDLコレステロールが高ければ動脈硬化が起こりにくいことになります。

 では、HDLコレステロールが高い値を示すのは、どのような人でしょう。女性は男性に比べて高い値を示し、多くの人は40-65デシリットルです。高HDLコレステロール血症は、男性90デシリットル以上、女性100デシリットル以上の場合に診断されます。

 相談者は93デシリットルですので高HDLコレステロール血症とは診断されませんが、動脈硬化を抑制するという点では良い方向に働くと考えられます。ただ、CETPという酵素の異常で起こる高HDLコレステロール血症の人は、最近の研究から動脈硬化を抑えるか否かに関してはまだ不明な状況です。そのほか、HDLコレステロールが増加する要因として飲酒や運動があり、甲状腺機能低下症の場合にも増加することが知られています。

 相談者の年齢なら、LDLコレステロールや血糖なども異常が見られないことから、年に一度程度の健診で経過をみることで十分と考えます。もし飲酒が多い場合は、やや控えることや、機会があれば甲状腺機能を調べておくこともいいと思います。

徳島新聞2008年8月10日号より転載

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