徳島県医師会 トップページへ

  • 文字サイズ標準
  • 文字サイズ拡大
文字サイズ変更について
県民の皆さまへ

【質問】 勢いがなくなり残尿感も

 40歳の男性です。最近、排尿の際にいろんなことが起きるようになりました。排尿をしたくなってトイレに行きますが、尿にあまり勢いがなく、力を抜くと数回たらたらと出てきます。時々、尿がV字のように分かれて出ることもありますし、トイレから出てしばらくすると何か気持ちが悪く、残尿感もあって再びトイレに行くこともあります。それと、便秘をしているときに尿の出が悪いような気もしています。何か関係があるのでしょうか。詳しく教えてください。



【答え】 排尿に関する悩み -原因さまざま 検診を-

徳島市民病院 泌尿器科 村上 佳秀

 「こんな症状は自分だけなのかな? 何となく気になるが病院に行くほどでもない。でもやっぱり不安…」。排尿に関する悩みは、こんなケースが多いのではないでしょうか。

 今回の相談の内容からは、次に挙げるような疾患の疑いがあります。

 一つは、尿道狭窄(きょうさく)です。外(がい)尿道括約筋(かつやくきん)より前側の尿道が外傷や尿道炎などで障害を受けて、その後、組織が治癒していく過程で硬く狭くなる疾患です。

 次に、膀胱(ぼうこう)頚部(けいぶ)硬化症が挙げられます。これは膀胱の出口部(膀胱頚部)が硬く、また狭くなっているために排尿時に開きが悪くなる疾患です。

 前立腺(ぜんりつせん)肥大症の可能性も考えられます。前立腺に発生した良性腫瘍(しゅよう)により尿道が圧迫されて排尿困難などを生じる、高齢者に多い疾患ですが、まれに40代でも発症したり、その予備群と思われる状態の場合もあったりします。

 このほか、慢性前立腺炎の疑いもあります。排尿が不便なこと以外に、下腹部痛や陰部不快感などの症状を伴うこともある疾患です。細菌などの微生物による炎症や骨盤内のうっ血などが原因と考えられていますが、その病態は複雑で十分に解明されていません。

 しかし、必ずしもこれらのいずれかの疾患に当てはまるわけではなく、他の疾患の可能性の場合や、自律神経の不調や生理的なものとして一過性におこる症状の場合もありますので、診断は専門医による検査が必要になります。

 検尿やX線検査、超音波検査などの画像検査のほか、尿流計検査、膀胱ファイバースコープなどが診断に有用です。治療は診断と症状の程度に応じてさまざまですので、自己判断での市販薬の使用はあまりお勧めできません。

 尿線がV字になるとのことですが、尿線は外尿道口(尿道の出口)や包皮の状態によって変化します。特に外尿道口が縱に広い場合は、尿線が上下左右に分かれたり散乱したりすることもあります。ホースで水をまくとき、ホースの先を指で押さえると2つに分かれるのと同じ状態です。これも一度泌尿器科を受診したときに、病的なものかどうか診察してもらえばどうでしょうか。

 最後に、便秘と排尿障害の関係ですが、極度の便秘になると、直腸にたまった便が物理的に膀胱や尿道を圧迫して排尿障害を起こします。また便秘の人は排便のときに強く息むので、この動作が前立腺を圧迫、前立腺のうっ血を招いて前立腺疾患を悪化させるといわれていますので、繊維の多い食事を取るなどして便秘を解消するとよいでしょう。

徳島新聞2008年6月22日号より転載

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.