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【質問】 皮を引っ張り洗わせていいか

 10歳の息子のことで相談します。おちんちんがうまく洗えずに困っています。洗うときに、痛くても皮を引っ張って洗わせる方がいいのでしょうか。それとも、無理に引っ張らずに洗える部分だけ洗わせたら衛生的にも問題はないのでしょうか。



【答え】 子どもの包茎 -処置・手術 必要になる場合も-

徳島大学病院 泌尿器科 高橋 正幸

 質問の内容がやや抽象的なので、お子さんのおちんちんの状態が分かりにくいですが、皮を引っ張ると痛みが生じる、すなわち包茎の状態であると推測します。包茎との前提で話を進めます。

 おちんちんは、先端の亀頭に外尿道口というおしっこが出てくる縦のスリット状の口があります。この亀頭を包皮という皮膚が包みこんでいます。

 包皮の先端の口(包皮輪)が狭いと、包皮を手前にむいて亀頭を見えるようにしようとすれば痛みが生じます。このように包皮をむくことができない状態を真性包茎といいます。また、普段は包皮が亀頭にかぶっていても、容易に包皮をむくことができる状態を仮性包茎といいます。

 どの子どもも、生まれたときは包皮輪が狭く、包皮と亀頭の間に生理的癒着があるため、包皮をむくことはできません。その後3~4歳ごろまでに、亀頭と包皮の間に黄色の垢(あか)(恥垢(ちこう))がたまってくると、包皮と亀頭との間の生理的な癒着が分離していくといわれています。

 日本の検診による統計では、1歳までの乳児期は86%、3歳児では34%、高校生では25%が真性包茎といわれています。つまり、大部分の子どもは思春期になると陰茎の成長とともに包皮輪が広がり、包皮と亀頭の間の癒着もはがれ、自然に包皮はむけるようになってきます。

 何の症状もないのに、子どもが小さいうちから、無理に力を入れて包皮を引っ張ってむこうとすると、包皮先端の皮膚が裂けて出血したり、亀頭と包皮の間が再度癒着したり、また包皮先端が硬く瘢痕(はんこん)化してしまうことがあります。

 包茎の状態であれば、必ず処置をしないといけないというわけではありません。処置や手術が必要となるのは<1>包皮輪が非常に狭いため、排尿時に包皮と亀頭の間に尿がたまり、おちんちんの先端が風船のように大きく膨らんでから排尿する<2>包皮先端から細菌が入って感染を起こすことで、先端から膿(うみ)が出て赤くはれあがる亀頭包皮炎を繰り返す<3>感染のために包皮先端の皮膚が硬くなって瘢痕狭窄(きょうさく)の状態になる-場合などです。

 相談のお子さんは10歳で、これから思春期を迎えます。そのため、陰茎の成長とともに何もしなくても自然に包皮がむけるようになってくる可能性は十分にあります。しかし現在、包茎で両親や本人が悩んでいるのであれば、大きく3つの方法があります。

 一つは、お風呂などで包皮を根元の方へ皮膚をずらすようにゆっくり引っ張ることで、毎日少しずつむいていく方法です。決して無理にむいてはいけません。もう一つは、病院にいって包皮先端の狭い部分を手術器具でゆっくり広げてもらう方法です。

 さらに、包皮を根元に向かって痛みのない程度に引っ張り、包皮先端の狭い部分に、ステロイドを含む軟膏(なんこう)を1日数回塗る方法もあります。これを4週間前後続けると、80%以上のお子さんの包皮がむけるようになります。これでも効果がなければ手術になります。

 衛生的には、お風呂ではシャワーでおちんちん全体をすすぎ、手やスポンジに少量のせっけんをつけて、包皮先端の皮膚から陰嚢(いんのう)にかけて優しく洗うだけでいいと思います。

 洗うときに決して痛みを伴うような包皮の引っ張り方は良くなく、包皮を手前に優しく引っ張っても痛みがあったり、いつまでも包皮がむけなかったりすれば、病院で受診し、ステロイド軟膏を塗布してみるのも良い方法だと考えます。

徳島新聞2008年6月1日号より転載

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