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【質問】 脇のしこりが気になる

 18歳の女性です。右側の脇の下に2個、腫れものかできもののような七ミリぐらいのしこりが、何日か前からあります。脇をそった後にできた気もしますが、ばい菌でも入ったのでしょうか。赤く腫れて痛みもあります。病気なのでしょうか。また、しこりのようなものは取り出してもらえるのでしょうか。



【答え】 異物肉芽腫 -切開して中の毛除去を-

きたじま田岡病院 形成外科部長 松本 和也(板野郡北島町)

 質問から現在の状態を推測すると、脇の下に炎症を伴う2個の小腫瘤(しゅりゅう)が存在するようです。

 一番考えられるのは「毛の迷入による異物肉芽腫(にくげしゅ)」です。脇の手入れをした後、毛の生える方向が横になったり、奥に向かって生えたりすることがあります。違った方向に伸びた毛が皮下や皮内に迷入してしまうと、通常は毛包(毛の入れ物)の中にある毛が直接皮膚や皮下の組織に接することになり、体内にトゲなどの異物が入ったときに起こるのと同様の反応が出てしまいます。

 この反応では赤みや痛みに加え、小さな塊ができます。異物肉芽腫はばい菌とは無関係で、でき始めた当初はチクチクとした痛みが強く、赤く少しブヨブヨした感じになります。治療する場合は、ブヨブヨの部分に数ミリの小さな切れ目を入れて、中にある毛とブヨブヨをかき出します。

 赤みが出始めてから約1週間を過ぎると、痛みはなくなり、赤い部分が黒っぽくなって最終的にやや茶色い硬いしこりになります。治療は局所麻酔でしこりを切り取ります。どちらの治療も通院で可能で、所要時間は約20分です。

 もう一つ考えられるのは「粉瘤(ふんりゅう)」で、「アテローム」や「垢(あか)ぶくろ」とも呼ばれます。粉瘤は皮下にある小さな皮膚の袋や、毛包炎(毛穴の炎症)の後にできた小さな袋の中に、角質(いわゆる垢)がたまったものです。

 普段は赤みや痛みはありませんが、剃毛(ていもう)や圧迫をきっかけに袋の中にばい菌が入って腫れることがあります。この治療も異物肉芽腫の場合と同様、小さく切開して中の膿(うみ)を出しますが、切開だけでは袋自体は残るので、ほとんどが再発、つまり再び腫れてきます。

 従って、切開後に局所麻酔をして残っている袋の部分を切り取ります。もちろん通院治療は可能で、所要時間は約20分です。

 いずれの症状も、放置しても癌(がん)などになることはほとんどありませんが、自然にしこりがなくなることはありません。治療を希望される場合は、形成外科や皮膚科などを受診することをお勧めします。

 最後に予防ですが、「毛の迷入による異物肉芽腫」などは脇の手入れ、つまり抜毛や細かい段差がある脇の皮膚を剃毛する際の小さな切り傷がきっかけとなることが多いようです。毛の周辺の皮膚を傷めないように手入れすることで毛の迷入を予防できますが、一つの解決方法として脱毛レーザーを利用することも考えられます。脱毛レーザーを約六週間ごとに数回照射することで永久脱毛が可能ですので、手入れの必要がなくなります。

徳島新聞2008年5月18日号より転載

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