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【質問】 腰などが痛く歩行困難

 79歳の男性です。2年ほど前から歩いているときに腰が少し痛いと思っていましたが、最近痛みが増し、100メートルくらい歩行するのが精いっぱいになりました。腰痛もありますが、ひざや太ももの筋肉が張って、歩くのが困難な状態です。地元の病院の整形外科でMRIやエックス線撮影をしてもらい、「すべり症」と診断を受けました。そこで、腰部に直接打つブロック注射を受けたのですが、40分くらいすると両足がしびれ、立つこともままならなかったので、怖くてそれ以来していません。そのあとは腰のけん引をしたり湿布を続けたりしていますが、あまりよくなりません。よい治療方法があれば教えてください。



【答え】 腰椎変性すべり症 -生活支障なら手術考えて-

梅原整形外科 梅原 隆司(徳島市末広4丁目)

 実際に診察をしていないので、相談内容からみた一般的な話をします。

 相談者は病院ですべり症と診断されたとのことですが、2年前の発症で、現在79歳ですので、おそらく年齢の高い人に多くみられる「腰椎(ようつい)変性すべり症」と思われます。この病気は腰骨を連結している椎間(ついかん)関節が長年の使い傷みで摩耗、変形することにより、腰骨がおなかの方にずれる現象、つまり「前方すべり」を生じることが特徴です。

 自覚症状は腰痛や臀部(でんぶ)痛、脚の痛み、しびれ感、連続して長距離を歩けないことなどが挙げられます。こうした患者さんを医師が診察すると、脚の筋力が落ちていたり、触感や痛みの感覚などが阻害されて鈍くなっていたりするほか、脚の腱(けん)を刺激しても反射が起こらない、あるいは弱いなどの神経の異常が明らかになることがあります。これらは、神経の圧迫による症状です。

 エックス線写真で腰椎を横からみると、腰骨が前方にすべっており、前かがみになるとすべりが強くなる場合もあります。正面からみた場合は、椎間関節が厚くなり変形しています。

 他の画像検査としてMRIがあり、腰骨の内部にある神経が入った袋の圧迫の状態やその程度が映しだせます。さらに手術を検討する際は、入院して行う脊髄(せきずい)造影や、CTでさらに詳細なすべりと神経に対する圧迫の状態を判断します。

 治療は、安静にしながら軟性コルセットの使用、消炎鎮痛剤、筋肉弛緩(しかん)剤、ビタミン剤、血行改善剤の内服、腰の神経へのブロック注射などを行います。しかしこうした治療にもかかわらず、腰や脚の痛みが強く、脚の筋力低下が進行していたり、ほとんど歩けなくなって日常生活に強い支障がでていたりするケースでは、手術も対象になるでしょう。

 手術は、すべりの矯正と神経の圧迫を緩めることを目標とします。矯正には金具を用いて強く固定することもあります。また、椎間板が消失しているような場合は、小さく切開し、そこから内視鏡を用いて腰骨の神経圧迫を緩めるだけの方法も最近採られるようになりました。この方法では体に対する負担が少なく、早期にベッドから起き上がることが期待できます。

 相談者は継続的な治療を受けていますので、もうこれ以上改善がなく、むしろ悪化していると自身が思うなら、手術を考えてもいいかもしれません。全身麻酔ができる状態の体で、重い合併症がなければ手術は可能だと思います。

 手術後、順調に経過すれば、痛みが取れることも期待できます。ただし個人差が大きい病気でもあり、現在の背骨と神経の詳しい状態も手術の適否の判断に必要なので、まずは整形外科専門医に詳しく相談されることをお勧めします。

徳島新聞2007年11月18日号より転載

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