徳島県医師会 トップページへ

  • 文字サイズ標準
  • 文字サイズ拡大
文字サイズ変更について
県民の皆さまへ

【質問】 胸のしこり探す方法は

 35歳女性です。乳がんの検診を受けようと思いつつ、今まで受診をしたことがありません。自分でしこりを探すことができると聞いたことがありますが、どちらかといえば胸も大きく、触ってはみるのですが、よく分かりません。未婚で出産経験もありませんが、親族に乳がんと診断された人が1人いて、遺伝が関係するのかどうかも気になります。自覚症状がなくても、定期的にがん検診を受けた方がいいのでしょうか。



【答え】 乳がん -定期的検診と自己触診を-

とくしまブレストケアクリニック 院長 笹 三徳(徳島市中島田4丁目)

 乳がんは世界的に増加しており、日本でも30歳から64歳までの女性のがん死亡原因の1位を占めています。現在、日本人女性の約20人に1人が乳がんにかかるといわれています。

 乳がんの危険因子には内分泌的なものと、遺伝的なものが挙げられます。内分泌的因子として、具体的には<1>初潮年齢が早い<2>閉経年齢が遅い<3>閉経後の肥満<4>ホルモン補充療法を受けていた人<5>出産しない、あるいは晩産の人-などがあります。これらは女性ホルモン(エストロゲン)にさらされる期間が長いほど乳がんになりやすいことを意味します。これらの要因には避けることができるものとできないものがあります。

 一方、遺伝的な要因は避けることができません。要因を持つ人は検診を定期的に受け、早期発見に努める必要があります。しかし、恐れることはありません。最近は画像診断の進歩で、触って分からないような小さなしこりでも発見でき、その場合なら乳房を残したままでほぼ100%生存できるようになってきました。

 さて、質問の35歳女性の遺伝的要因について説明します。親族に1人、乳がんの人がいるとのことですが、これだけではリスクが高いとはいえません。日本人の乳がんは、散発性乳がんといって、たまたま乳がんにかかっただけのものが多いからです。

 遺伝性乳がんの定義は▽第一度近親者(親、兄弟姉妹、子ども)に発端者を含めて3人以上の乳がん患者がいる▽第一度近親者に発端者を含めて2人以上の乳がん患者がいて、いずれかの患者さんが40歳以下の若年者または両側性乳がんの人がいる-などです。

 遺伝子診断も可能になってきました。BRCA1やBRCA2という遺伝子に異常がある人は遺伝性乳がんになる可能性が高く、乳がんになりやすいといえます。

 次に検診について説明します。乳腺は授乳をすることで、脂肪変性し柔らかくなります。そうなると触診によって小さなしこりを発見することも可能ですが、授乳経験のない人や胸が比較的大きい人は、触診で小さなしこりを発見するのは難しいといえます。

 しかし、近年の画像診断の進歩で、このような人でも専用の超音波検査を使えば、1cm以下のきわめて早期の乳がんを発見することが可能です。マンモグラフィーでも微細石灰化陰影といってがん細胞が増殖した結果、起こる壊死(えし)物質をとらえることもでき、しこりを作る前段階の乳がんを発見することもできます。

 従って、専用の画像を使った定期的な乳がん検診をお勧めします。また一般の触診は医師が行うのですが、これはある程度の大きさのしこりがなければ発見できません。しかし、自分で触診をすると、以前の状態を把握しているので、乳腺の硬さや表面の感じなど少しの変化をとらえることができます。ぜひ定期的な画像を使った検診に加え、月1回の自己触診もお勧めします。

徳島新聞2007年10月7日号より転載

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.