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【質問】 手にしびれ感、指にも痛み

 71歳の女性です。6年前、寝ている時に手がしびれるので整形外科を受診したところ、頸椎椎間板(けいついついかんばん)ヘルニアと診断されました。その後、3年前に手根管(しゅこんかん)症候群と診断され、メチコパールを服用していましたが、あまり効果はありませんでした。昼間はそれほど気になりませんでしたが、朝方に手にしびれ感やこわばりがありました。今年の5月ごろから症状がひどくなり、朝方に手がしびれ、握りにくくなり、指の痛みもあります。治まるまでに時間がかかるようになりました。昼間も動かなくなるのではないかと心配です。どのような治療をすればよいのでしょうか。手術は簡単と聞きましたが…。



【答え】 手根管症候群 -ギプス固定や局所注射-

橘整形外科病院 橘 敬三(徳島市寺島本町西2丁目)

 手根管症候群は、正中(せいちゅう)神経が手のひらを横に走る横手根靱帯(じんたい)に圧迫され、圧迫部位から離れたところにしびれや痛みが出る神経絞扼(こうやく)性障害です〈図参照〉。症状が進行すれば、しびれや痛みだけでなく、母指球筋(きゅうきん)(手のひらの親指側にある膨らみ)がやせ、物がつかみにくくなります。

 一番多いのは、特発性といって原因が不明で、正中神経の圧迫が自然発症したように思われるものです。その他の原因には腱鞘炎(けんしょうえん)、腫瘍、長期血液透析、骨折、関節変形、先天的素因などがあります。

 症状は、手のひら側の親指から薬指半分までのしびれ、また、程度によりそれぞれの指先や手首の痛みを訴える場合があります。

 特徴的な現象は、明け方に症状が増悪するため睡眠障害を訴え、このときに無意識に手を振ることで症状の軽減を図ろうとする動作がみられることです。さらに進行すると、母指球筋のまひにより、母指対立運動障害といって母指と小指を付けることができなくなり、物をつまんだり握ったりする動作に支障が出ます。

 診断では、しびれの範囲や筋肉のやせなど症状が一致しているかどうか、手関節を手のひら側に折り曲げたり神経圧迫部位を押さえたりすると正中神経領域のしびれや痛みが誘発されるかどうか、圧迫部位をたたくと放散痛を感じるかどうかを診察します。

 また、電気刺激による神経伝導速度や筋電図をとって調べます。鑑別診断として頸椎の病変や糖尿病など、他の原因による末しょう神経障害などを除外できるかどうかも調べます。

 治療はまず保存的療法を行います。手関節の安静のため、夜間や昼間でも特に手を使わないときはギプスの板やサポーターによる固定を行い、消炎鎮痛剤やビタミン剤の投与、局所麻酔剤やステロイド剤の局所注射を行います。

 しかし、保存療法を1-3カ月行っても改善しないものや母指球筋がやせ始めたものは、手術することになります。手術は、圧迫している靱帯を切り離し、正中神経を開放除圧します。最近は、以前に比べて切開創を小さくしたり、一部の施設では内視鏡を使用する手術が開発されたりと、体への負担も少なくなってきています。

 ご相談では症状が少し進行しているようです。母指球筋のやせはないでしょうか、茶筒を開けるときなどに親指が十分開くでしょうか。主治医とよく相談されて治療方針を決められてはいかがでしょうか。

徳島新聞2006年11月26日号より転載

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