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【質問】 睡眠薬をのまないと眠れない

 60代後半の女性です。昨秋ごろから眠れなくなり、睡眠薬をのんでいます。のむと4~5時間眠れますが、一度目が覚めると眠れません。のまなかったら一晩中眠れません。睡眠薬は毎日のんでもいいのでしょうか。のまなくても眠れる方法はありますか。睡眠薬はマイスリー錠です。



【答え】 不眠症 -適正な用法・用量守れば安全-

富田橋クリニック 元木 義政(徳島市富田橋5丁目)

 最初に不眠全般について説明します。正常な睡眠時間は6~9時間といわれていますが、はっきりしたものはありません。何時間眠ったかというより、日中しっかり覚醒して過ごせるかどうかを必要睡眠時間の目安とすればいいでしょう。睡眠が減少したものが不眠です。入眠障害(寝つきが悪い)、熟眠障害(眠りが浅い、途中で目が覚める)、早朝覚醒(朝早く目が覚めてしまう)の3つのパターンがみられます。

 睡眠薬は作用時間の長さを基準にして超短時間作用型(2~4時間)、短時間作用型(7~10時間)、中間作用型(20~28時間)、長時間作用型(36~120時間)の4種類があり、不眠パターンに合わせて使い分けられています。

 また、不眠は持続期間と原因を組み合わせることによって大きく3つに分類されます。

 【一過性不眠】普段は睡眠が正常な人が手術など急性ストレス、痛み、不安などに遭遇したときに来すもので、せいぜい数日間で終わります。多くは睡眠薬を使用しなくても切り抜けられます。

 【短期不眠】仕事や家族生活、あるいは重大な病気などによる比較的長期間の状況性ストレスが原因となるもので1~3週間続きます。漫然と睡眠薬を使用しないことが大切です。

 【長期不眠】不眠が1カ月以上にわたることが特徴で、その原因にはさまざまなものがあります。不眠に対して過度にこだわり、眠ろうと焦りすぎる神経症性不眠▽基盤にうつ病、統合失調症、認知症などがある精神疾患に伴う不眠▽高血圧、糖尿病、心疾患、睡眠時無呼吸症候群など身体疾患と関連した不眠▽アルコール、薬物などに伴う不眠▽老人性の不眠-などがあり、それぞれの原因を考慮した睡眠薬の使用が必要です。

 相談の女性は熟眠障害タイプと長期不眠型が重なったものと考えられます。老齢でもあるので身体疾患などを考慮する必要もあります。また、現在服用中のマイスリーは超短時間型睡眠剤であるため、中間作用型などの睡眠剤への変更が必要かもしれません。現在受診している医師にさらに詳しく相談するか、精神科、心療内科など専門の医師に相談するのがよいと思います。

 「睡眠薬は毎日のんでもいいのでしょうか」との質問ですが、現在の不眠症の治療はベンゾジアゼピン系睡眠薬で行われることがほとんどです。この薬剤は適正な用法・用量を守っていれば重大な副作用を来すことはなく安全で、長期に服用しても使用量が増えていくとか依存性のほとんどない薬剤です。「のみ続けるとぼける」などいわれますが、そんなこともありません。

 マイスリーも新しいベンゾジアゼピン系睡眠薬で、毎日服用しても大丈夫です。しかし、服薬中止には注意が必要です。突然中止すると服薬前よりもさらに不眠がひどくなることがあるからです。徐々に減量しながら中止していく必要があります。

 「睡眠薬をのまずに眠れる方法はありますか」ということですが、次のことに効果があると考えられています。参考にしてください。

 <1>睡眠時間にこだわらない。日中に眠気がなければそれで十分と考える<2>就寝4時間前のカフェイン、1時間前のたばこを避ける。寝酒をしない<3>眠くなるまで寝床につかない。眠ろうと焦らない<4>毎日同じ時刻に起きる(前夜の就寝が遅くなった場合でもいつもの時刻に起きる)。規則正しく三度の食事をとる。毎日運動する(できれば入眠2時間前ごろの運動がよい)<5>就寝前に熱めの風呂に20分程度入って身体を温める<6>午後に15~20分くらいの昼寝をする(長時間はしない)。

徳島新聞2006年2月5日号より転載

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