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【質問】 娘が「とびひ」になった

 5歳の長女のお尻や足の付け根に、赤くただれができています。「痛い」と言って、かきむしろうとします。保育所でプールに行ったので、「とびひ」ではないかと思います。そうだとしたら、誰かに感染するのでしょうか。また、どんな経緯で感染したのか、体質も関係しているのか教えてください。



【答え】 伝染性膿痂疹 -患部を覆って感染を防止-

宮岡皮ふ科医院 宮岡 由規(徳島市仲之町2丁目)

 「とびひ」の正式な病名は「伝染性膿痂疹(のうかしん)」です。黄色ブドウ球菌や溶血性連鎖球菌といった細菌が原因で起こる皮膚の感染症の一つです。

 原因菌によって症状が異なり、黄色ブドウ球菌の場合には水疱(すいほう)性(水ぶくれ)となり、溶血性連鎖球菌の場合には痂皮性(かさぶた)となります。

 多くは黄色ブドウ球菌による水疱性膿痂疹で、0~6歳の幼少児に好発する夏季(6~9月)の代表的な細菌感染症です。非常に伝染力が強く、接触によって感染します。顔や手足にかゆみを伴う水ぶくれができ、それが簡単に破れて体のほかの部位やほかの子どもに次々と“飛び火”して、どんどん広がっていくことから、この俗称が付きました。

 どうして「とびひ」になるのでしょうか。患者さんの多くは「虫刺されの跡がいつまでもかゆく、じゅくじゅくしている」と訴えます。「とびひ」は虫刺されや汗疹、かき傷、すり傷、湿疹などに黄色ブドウ球菌や溶血性連鎖球菌が入り込んで起こります。

 これらの細菌は健康な皮膚には感染しません。しかし、皮膚に傷ができている状態、すなわちアトピー性皮膚炎や乾燥肌で常にかゆみがあり、かいている状態では皮膚のバリア機能が低下して抵抗力が弱くなっているので、接触によって自分の体のほかの部位や他人に感染します。だから、日ごろのスキンケアが大切になります。

 「とびひ」は低年齢からの集団保育の増加、冷暖房設備や温水プールの普及などから夏季に限らず、冬季にも見られることがあります。

 また、大人にも発症することがあります。水疱性膿痂疹では初めに赤い斑点ができ、その上にかゆみのある水疱や膿疱ができます。水疱は破れてびらんとなり、手・足・顔をはじめ、全身のいたるところに多発します。

 溶血性連鎖球菌による痂皮性膿痂疹は、頻度的には多くはありませんが発熱や全身倦怠(けんたい)といった全身症状を伴うことがあります。

 治療は抗生物質の内服とともに、局所には抗生物質の入った塗り薬をガーゼにのばして張り付け、分泌物が周囲に付かないようにします。最近、耐性ブドウ球菌であるMRSAによる「とびひ」が急速に増加しています。この場合には抗生物質が効きにくいのですが、有効な外用抗菌薬の使用、局所処置、スキンケアを行うことによって対応できます。

 実際「とびひ」になれば、保育所や幼稚園ではほかの子どもにうつさないよう、なるべく子ども同士が触れ合うのを避けましょう。患部をガーゼで覆って直接触れないようにし、かかないようにつめを短く切ってください。プールは完全に治るまで絶対に禁止です。毎日入浴して清潔に心掛けましょう。せっけんを泡立てて手でやさしく洗い、患部の菌を洗い流してください。また、きょうだいにうつるのでバスタオルは別々にしましょう。

徳島新聞2005年8月7日号より転載

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