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【質問】 関節の袋が炎症し雑音

 70代後半の女性です。3年ほど前から、右腕を前から上へ挙げたり回したりすると、コチコチと音がしていました。2カ月前からジャリジャリという音に変わりました。整形外科でレントゲン撮影すると、骨に異常はないが、関節の袋が炎症を起こしているということで、湿布、塗り薬、痛み止めを処方してくれました。袋とはどんなもので、どうなっているのでしょうか。どうすれば炎症は治りますか。高血圧症なので、降圧剤を服用しています。血圧とは関係ありますか。日常生活に支障が出ないか心配です。



【答え】 関節の機械性炎症 -ストレッチを根気よく-

徳島赤十字病院 副院長 湊 省

 一般的に手や足(四肢)の運動で異常な音が出るときは、関節およびその周辺から起こっていることがほとんどです。関節は、骨と骨が連結する部位にあり、骨の端を覆う軟骨(関節面)、関節を固定する靱帯(じんたい)、関節を包み関節に栄養を与えながら関節液を出す関節包(関節滑膜)、関節を動かす筋肉や腱(けん)で構成されています。

 上肢(手)には、肩、ひじ、手首にそれぞれ肩関節、ひじ関節、手関節と呼ばれる関節があり、これを上肢の三大関節といいます。

 質問では、右腕を挙げたり回したりすると音(雑音)が出るということですが、これらの運動で最もよく動く関節は肩関節なので、右の肩関節周辺から発生した異常雑音と考えられます。

 肩関節は、上腕骨(腕の骨)と肩甲(けんこう)骨(肩の骨)を連結しており、球形をした上腕骨頭と浅いうす形をした肩甲骨の関節窩(かんせつか)でつくられる球関節であり、どの方向にも動き人体の関節の中で最大の可動性を持っています。そのため、長い年月、上肢を使っていると、肩関節を動かしている筋肉や腱、関節包などの軟部組織には負担がかかりやすく、さまざまな障害が起こります。

 腕を挙げる筋肉である棘上筋(きょくじょうきん)などが腱となり、肩関節の中を通り、上腕骨頭についています。ここを腱板といいます。肩関節の運動によって、これが摩擦され、次第に傷んでくることがよくあります。またひじを曲げる筋肉(上腕二頭筋)が腱となって肩関節の中にあり、損傷されることがあります。関節の表面を覆う軟骨が摩耗することや、軟骨が損傷し遊離することで関節の適合性が悪くなることもあります。

 これらいずれのときにも、うずくような痛みと運動障害が起こり、関節の運動で異常雑音が発生することがあります。このときの炎症を機械性炎症といい、関節に機械性炎症を起こすと、関節包は厚くなり伸縮性が低下します。そのため、さらに関節の動きが悪くなります。よく五十肩といわれるのはこのような状態が多いと思われます。

 そのほか、肩の外側の筋肉(三角筋)が傷痕になったり、肩甲骨とろっ骨の間の異常により運動時雑音が発生したりすることもありますが、頻度はまれです。また、関節リウマチは関節包に炎症を起こす代表的疾患ですが、初発症状は手指の関節から起こることがほとんどで、肩関節から起こることはまれです。

 あなたは70代後半で、3年前から症状があるとのことですので、慢性の機械性炎症による関節軟骨の変性や、腱板、関節包の変化により関節の適合性が悪くなり運動時雑音が出ているのではないかと考えます。多分、運動障害やうずくような痛みもあると思います。

 現在処方されている内服薬や外用薬のほかに、風呂などで肩を温めた後、ゆっくりストレッチ(左手で右腕をいろいろな方向に引っ張る)するとよいでしょう。毎日、根気よく続けることが大切です。慢性的な疾患ですので、短期間ではよくなりませんが、半年から1年の単位で改善すると思います。なお、高血圧と直接的には関係ないと思われますので、降圧剤の服用は問題ないでしょう。

徳島新聞2005年1月9日号より転載

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