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【質問】 足のむくみが気になる

 25歳の女性です。職場では受付係をしているので、朝から夕方までいすに座りっぱなしの状態です。そのためかどうか分かりませんが、夕方になると足がむくみ、朝は楽に履けたブーツを履くことができなくなります。1日中、立って仕事をしている人は、むくんだりもするのでしょうが、座ってじっとしていてもなるのでしょうか。やはり、血行不良なのでしょうか。むくまないための予防法や、むくんだときの対処法を教えてください。



【答え】 特発性浮腫 -あおむけの就寝で解消-

住友内科病院 住友 辰次(徳島市安宅2丁目)

 血管の外の組織細胞間にある体液を組織間液と呼びますが、むくみ(浮腫)とは、その組織間液が増加した状態をいいます。組織間液が2リットル以上増加すると、皮下、特に目の周りや下腿(かたい)、足の背部、そして手や指などにむくみとして現れます。また、浮腫の程度が強くなると胸水や腹水を伴うことがあります。

 組織間液は、毛細血管における水分のろ過と吸収、ならびにリンパ系による水分の還流のバランスによって、通常は一定に保たれています。しかし、一定に維持されているはずの組織間液も、次に述べる主な5つの原因により影響を受けます。

 <1>毛細血管内静水圧の上昇体の中の毛細血管内部の静水圧の上昇が、水分のろ過を増大させて吸収を抑制します。心不全による心性浮腫の主な要因がこれであって、心拍出量の減少による静脈圧の上昇が原因となります。静脈炎あるいはいろいろな原因による静脈の閉そくによる局所性の浮腫の主因でもあります。

 <2>血液膠(こう)浸透圧の低下 ネフローゼ症候群における血しょうタンパクの尿中喪失、肝硬変におけるアルブミン合成能力の低下は、低アルブミン血症を起こし、その結果、血液の膠浸透圧の低下を招きます。毛細血管での血しょう膠浸透圧の低下は水分のろ過を容易にし、それとともに、水分の吸収を抑制して組織間液を増加させます。それぞれ腎性浮腫、肝性浮腫とも呼びます。

 <3>毛細血管壁透過性の増加これは敗血症、やけど、外傷、じんましん、遺伝性血管神経性浮腫などの主因となります。血管壁の透過性の増加によって、直接水分の漏出が増加するとともに、血中アルブミンも組織間液中に漏出してしまいます。その結果、血管内の有効膠浸透圧が低下することが組織への水分の貯留を招きます。

 <4>リンパ系の還流障害 主として手術、放射線照射、悪性腫瘍(しゅよう)の転移などにより、リンパ流の障害を受けたことから、末しょう部に局所性の浮腫が現れます。

 <5>その他の原因 粘液水腫、栄養失調、妊娠、エストロゲン、ステロイド、血管拡張薬(特にカルシウム拮抗(きっこう)薬)。

 <6>原因不明のメカニズム 女性にみられる特発性浮腫のメカニズムは、明らかになっていません。浮腫の周期性発症が特徴です。あなたの場合は、これに相当するものと思われます。この場合、立っているのと座っているのとでは、基本的に程度が違うだけで同じと考えられます。

 治療法としては、水分、食塩の摂取を制限することと、利尿剤などが考えられます。

 あなたの場合は、毎日数時間、あおむけに寝るとよいでしょう。あおむけに寝ると、下半身のむくみが全身に拡散され、血圧の低下が是正されるため、むくみが解消されるのです。また、朝の起床時に弾性ストッキングを着用することも有効です。

 以上、一般的なことを述べましたが、内科医を受診され、検尿その他必要な検査を受けて適切な治療を見つけてください。

徳島新聞2004年12月5日号より転載

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